燗を楽しむ

イチロー

2006年11月06日 00:27



酒呑みってぇのは、意地汚いものでございましてね。
帰ってきて、銭湯なんぞにまず行きまして、さっぱりして帰ってくるってぇと
膳の前にどっかりと座り、まずは酒となる。

まずは「酒」ってぇことになりますと、まずは酒でございまして、酒がスッと
出てこないと機嫌が悪い。

あ、あ、しょうがねぇな、徳利に入れて、早いとこ燗をおつけなさいよなんて
指図をするわけでございますが、燗がつくのが待ち遠しくて仕方ない。

そこに気の利いた肴でも、トンと置いてもらい、湯気がたつ鍋の中で、すこ
ぉし湯気が立ち始めれば、おいおい、人肌だよ、熱すぎてはいけないよ
なんて、言い始める。
待ち切れないのでありますな。

これが居酒屋となると、ちょいと変わります。
燗で二合おくれな、なんて注文すると、すぐに出てきますな。
これは、酒燗器なんてもので、あらかじめ暖めてありますから、手早い。

2合徳利に入れて持ってくる。
商売のことですから、そこはちゃんと突き出しをそろえて持ってきます
から、まずは一安心なんですが、トンと置かれた徳利をまずはジッと
見ますな。

この徳利の首から上まで、すりきりに入ってますと、当たりの店。
これがぐっと、首の下となりますと、チェッなんて、ペケな店でございます。

さらに、徳利を持ち上げて、ちょいと小指を徳利の底に忍ばせてみる。
するってぇと、上げ底だったりしますと、またへそを曲げる。

てやんでぇ、商売だって、こんな2合があるもんかい、なんてね。
商売の2合は、1号7勺なんて、むこうも商売でございます。

まあ、酒呑みなんてぇものは、子供みたいなもんで、量が多いだ少ない
だと、だだをこねますな。

酒はすりきり盛りがよく、突き出しがちょいと盛りがいい。
こんなもんで、酒呑みは納得しちゃうわけですから、かわいいもんです。

マグロつくりましょうか?なんて聞かれようもんなら
そうか!マグロたのむぜ、なんなら尾頭つきで、なんて、そんなに食えや
しませんが。

秋から冬になる、外でミッチリと働いてくるってぇと、燗酒で一杯やるのが
楽しみなものでございます。

良妻賢母などと申しますが、こんな婦女子は徳利になみなみと、1cmほ
どは大盛りに出す方を申します。

亭主の働きはこの、なみなみにかかっているわけですな。

はい、逆はどうだって、はいはい、良夫賢父でござんすな。
そんなものは、聞いたことはありませんが、これも酒をもう1cmほど盛り
まして、お疲れさま、奥様などと、へりくだり、ちょいと肩でもおもみしまし
ょうぐらい、言いましょうかね。

まあ、適量のお酒を気持ちよく飲ませまして、どんどん寝てもらうほうが
明日の働きがよい。

酒のみとはそんなものでございます。

酒ってえのはね、あんたね、そりゃーね、ああた・・・

酒を飲みながら、書いちゃいけませんな、くどくなります。

功徳は為になり、口説けば色っぽくなり、くどくなれば、嫌われると。

そろそろ、お時間がよろしいようで。

かあさん!もう一杯、お願い

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