菖蒲色しょうぶいろ

イチロー

2011年01月21日 09:31



父さんと母さんの写真がありますからね。
八十を過ぎた父と七十九となった母がいつも気にしても「あり
ますからね」で済ませている。

日本の伝統色のその色と名前を見て何が書けるかに挑戦してい
ます。

心臓に問題が出た父が家業を辞めてしばらく、欝状況になって
薬漬けとなり外に出なくなってしまった。
家になどいる人ではなかったから母も心配したのだが、やがて
薬をやめて今は健康となった。

それでも家から外に出なくなってもう何年も経つのです。

家にばかりいる父と母を誘って最後にドライブに出かけたのは
掛川市の郊外にある加茂菖蒲園でした。

古い寺や建物が好きな父を誘い出すには花と江戸時代中期の庄
屋屋敷があるここならばと思ったのでした。

そしてカメラで父と寄り添う母を撮った、その写真を大切に
保存してあるのです。

父と母は五月末の菖蒲をバックに写っています。
その写真などあげないのは、いつまでもこんな写真を使うこと
などないと決めているからなのです。

「とてもいい写真だけれど、当分は使わないね」

これが父と母との約束です。写真など持っていない二人だけれ
ど、寄り添う姿はやはり50年以上添った夫婦なのです。

パソコンにいつでも取り出せるようにしまってあるけれど、そ
んなことはいつまでもしたくはないのです。

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