千種色ちぐざいろ

イチロー

2011年01月30日 09:31



「まだかなあ、早く帰ってこないかなあ」、落語「薮入り」で
奉公に出した息子が薮入で帰ってくるのを両親がソワソワして
待っています。

日本の伝統色のその色と名前を見て何が書けるかに挑戦してい
ます。

千種色は「商家の使用人の仕着せに使われた色」、まさに奉公
した息子「亀」ちゃんが着ていた色なのでしょうか。

仕着せ(お仕着せ)とは店のユニフォームでもある。同じ色の
着物を着て前掛けをかけていれば、どの店の小僧かわかる。

おや、伊勢屋さんの小僧さんだね、と認識されるのです。

遠い修行時代、浅草の対岸である向島の小梅でも、「山崎さん
の若い衆のイチローちゃん」と呼ばれた頃、やはり同じように
町内で可愛がられながら仕事を覚えたものでした。

向島は花柳界の地、料亭が並ぶ道では朝から板前修業の若い衆
が外に座り、芋を剥いています。
寒い季節にも下駄をはいて買い物に歩きます。

芸者さんになる前の半玉さんが夕方を前に一番湯に向かいます。

中華料理屋の小僧さんは一日中おかもちを持って自転車を走ら
せています。

ある夜、浜松から出てきてキョロキョロしていた小僧は駅で
チンピラにからまれます。

それを見ていた寿司屋の小僧が注進して、すし屋が建具屋が
米屋のおじさんが飛び出してきて囲み、「おとといきやがれ」
と小僧を守ってくれたものでした。

小僧奉公はその店の「子」となることです。
お仕着せを脱ぎ、町風となった一張羅を着て国を目指す休み
は「薮入り」同様の気持ちがあったものでした。

「イチローちゃん、帰るのかい」、寿司屋の小僧は盆暮れが
忙しく帰ることができません。
そんなことを思い出したお仕着せの色でありました。

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