「海辺の町でお客さんの送り迎えをするんだよ」
魅力的な計画を聞き、仲間の選択を聞けばワーゲンバスだと言う。
車好きはそんな計画にまんまと乗り、頼まれもしないのにワーゲ
ンバスを探し始める。
車趣味な男たちはそんな情報に夢中になり、青だ白だツートンだ
とカラーリングから年代別のモデルの話を始め出すのです。
ワーゲンな楽しみは雑誌POPEYEから始った。アメリカの西海岸
の文化を直輸入する情報の網羅の中にカリフォルニア仕様のワー
ゲンがあり、そのモデルの一つにバスがあることを知った。
仲間と遊び道具を満載して海辺を走るワーゲンバスの夢である。
仲間でもそれがお客さまでも乗せる車ならば楽しさを演出したい。
協力なエアコンを持ち紫外線反射のガラスを持ち、豪華な内装を
持つ「イマドキ」ならば何の問題もないのだけれど、使うところ
は海辺の町である。
そのひなびた駅から海に送迎するならば窓からの風、小さなビニ
ール張りのシートでよく、砂でもゴミでも容易に掃き出せるよう
な気楽さのある車がよい、窓からは海の景色と潮の香りを取り入
れながら走るのである。
「意外と高くてね」、電話から少し萎れた声がする。
どんな高級な車だとしても楽しさまでを買うことはできない。
けれど、遊びを形にした車なら乗る前から楽しくなってしまう。
インターネットで大切にされただろうバスを見つけるたびに「お
おっ」と注目し、その姿を想像であの海辺の駅に置いてみる。
家族連れが駅から降りてお迎えの車をキョロキョロと探す。
そこで現代から取り残されたようなファニーな車が停まっている。
「ニカリ」とした仲間がハーフパンツにTシャツで迎えている。
そんな様子を思い浮かべる顔も「ニカリ」としているのである。