イチロー的こころ（旧版）

潮が干けば人は満ちてくる。

天気予報の満潮時刻、干潮時刻を見て家族そろって出撃するのが、浜名湖
の初夏の風物詩、潮干狩りです。

雄踏橋から眺めれば、浜名湖が遠浅の湖であることを認識する。
水辺からずいぶん離れても膝ほどの水しかないことがわかるのです。

お父さんはおお張り切りで膝を越すような沖へ、お母さんは子供たちと水辺の
砂を貝掘り熊手で探します。

お兄ちゃんは弟や妹とは違います。お父さんに負けじと深い水の中で大きな
貝の宝探しをはじめています。

「見て、見て、大きいよ！」なんて声が上がれば、水の中をじりじりとカニのよ
うに移動してそちらへ行くおにいちゃん。

小さな弟や妹はもう疲れてしまってお尻を水につけて貝を掘るのです。

「かえち（着替え）ないのにねえ」、お母さんは帰りはパンツなしで車に乗せよ
うと考えています。

深い深い水まで歩けば、お兄ちゃんは手が届かず、足の指で砂をかき、足指
で貝をはさんでは貝をとる。

満ちてきた潮に人が去りだすと、ときおり波もやってくるのです。

バチャーン、ほら半ズボンぎりぎりまで入っているから、お兄ちゃんもビッショリ
になる。

かくして、子供たちは三人ともパンツなしで帰ったのでありました。

三人一緒にお風呂に入ると、首や肩が真っ赤に焼けてお湯がしみるしみる。

「あのな、足でな、でっかいカニを踏んだんだぞ」　お兄ちゃんの武勇伝は続き
ます。

幼い日の潮干狩りのお話でありました。