鼻緒の雨

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鼻緒の雨

キュッと足指に鼻緒を感じて歩くのが夏の楽しみである。

しかし頃は梅雨、冬ならば歩き始めたみいちゃんが、おんもへ出たいと泣いて
いるところなのだが、大人の男、それもちょいとオヤジでありますから、分別は
ある。

下駄を助手席に乗せまして、試すがめす眺めまして、よいものだなと思いあが
ら何度も手にとり、足指の代わりに手指を入れまして下駄を履かせている。

明日も雨そうであります。

これも大昔、新しいキャンバスのバスケットシューズを買ってもらいますと、部屋
で紐を通しまして試し履きをする。
ついでにズボンも履いてみて、シューズとの具合を確かめる。

一度は脱ぎますが、また履いてしまいまして、「いい加減にしろ」なんて叱られ
ている。 新しい靴はうれしくて枕元に置いて寝たものでありました。
明日は遠足だなんて時でありました。

下駄も同じでありまして、さんざ迷いまして買いますと、靴下を脱いでしまいまし
て車の中で履いてみます。
ところが、さすがに下駄では運転できませんから、助手席に置く。

足指の感覚というものは強烈でありまして、親指と人差し指に感じた喜びは靴
を拒否いたします。

こいつを履いて、夕方に近所を一周してやろうなんて考えるわけであります。

下駄をはいた自分を風景におきまして、ガランゴロンと歩きますには、本来なら
ば作務衣あたりが似合いそうでありますが、持っておりません。

これはジーンズでも十分だなんてことを思いまして、中村雅俊化しようなんてこ
とを考えております。

雨か、雨ねえ、明日履けないならば、今夜歩いてみるか!

なんて気合を入れていたりする。 

あまり遅ければ、近所の迷惑でございまして、ガランゴロンが出せないんであ
りますな。

おろしたての喜びは、靴の中の足指が知り、足の裏がひんやりと覚えております。

下駄の季節がやってまいります。

ガランゴロンに、カラコロカラコロと追いかける音が重なることを思いましては花火
に縁日に出かけようじゃないかと想像するんですな。

下駄を玄関に置きますと、これは散歩への誘いであります。

「ちょっとそこまで言ってくるぜ」 そんなセリフで酒屋までビールを買いに行って
みようなんて考えますな。

下駄のある風景であります。

揃いも揃えて、山下のぶん屋兄ぃの商売がはじまりますよ。

どうぞ木曜から日曜の午後、営業であります。ご贔屓にお願いいたします。


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この記事へのコメント
今日は、お忙しい中ありがとうございました、ソウルフードプロジェクトは着々準備中ということでこんごともよろしくお願いいたします。
Posted by tokutoku at 2008年06月25日 22:06
tokuさん こんにちは
こちらこそ楽しい話ありがとうございました。
着実に積み重ねて浜名湖のうなぎをお伝え下さい。
応援していますよ。
Posted by イチロー at 2008年06月26日 11:09
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    コメント(2)