イチロー的こころ（旧版）

夏網戸にやってくる珍客はカブトムシやクワガタムシにカナブン、コガネムシ。
網戸にバリリと張り付けば子供にはバンザイするほど嬉しいものでした。

毎日楽しみにしていると時には大きくて不気味な蛾がとまっていたりする。
夏の夜は嬉しいものも怖いめのも一緒に飛んでいるのでした。

ある時友達がカブトムシの蛹がある所を見つけました。

大工さんのオカクズが捨ててあるところで蛹たちは成虫になるのを待ってい
るのです

どこにいるかわかりませんから細い棒を差して蛹の入っている空洞を探すの
です。

差した棒が空洞に届けば突き抜けて軽くなるのです。そこを掘れば蛹がいる
のです。

カブトムシのオスの蛹はしっかり角を持っていてました。

乱暴に棒を差せば穴の中の蛹を傷つけてしまう。

生まれる前の命を潰すと、楽しい蛹掘りはとたんにつまらいものになりました。
大事な蛹はカブトムシになれずに殺してしまったのですから。

ひと夏で蛹掘りはやめてしまいました。仲間の一人がたくさんの蛹を潰して
しまったからでした

カブトムシは羽化したばかりは茶色をしています。時間が立つと強そうなま
っ黒に変わるのです。

僕らは夜な夜な公園の水銀灯の下を探しました。
見つけられなくて変えると、ちゃんと家の網戸にいたりするのです。

何匹捕まえたかは、上級生と並んで学校へ行く通学班での朝の話題でした。

一晩中籠の中でカサコソと音がして眠れないと迷惑そうな母の顔を見ても平
気な子供だったのでした。