イチロー的こころ（旧版）

彼岸が過ぎた鴨江寺の塀にザクロ実が熟れています。

夏には育たない実を落とした枝は今は重く垂れ、雫が実を包んで
いっそう鮮やかに見せています。

お寺から顔を出したとしても熟れた実をとる人はおりません。
観音さまがお参りする人を慰める秋の終わりの色だからです。

ひとつの実は完全な世界を表します。僕らは一つの命の星を眺め
ているのです。

銀色の雨に刺されることもなくツヤリツヤリと輝いていくつかの星が
輝いています。

九月もおしまい、十月は秋が深まっていく月です。

遠いお山の木から少しづつ枝を渡って秋は里に降りてくるのです。

紅い色は進んでくるのです。