ふたりの春

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ふたりの春

「二人の春は来るのかしら」、と小さなレンゲ草が言いました。

「きっとくるさ」、とつれあいのレンゲ草は言いました。

南に大きな塀があるから、小さな田んぼは一番に暖まり、今年はじめての
レンゲ草が咲きました。

「いつ来るのかしらね。」、陽を浴びてのびあがってレンゲ草が話します。

「おや、今が春じゃないって言うのかい?」と微笑みます。

二人は、ふかふかの真っ黒な土で育ちました。ほんの少しづつですが葉を
伸ばし、その葉が暖かさを集め、今朝花を咲かせたのでした。

二人の茎はじつは、葉の下でくるりと交差して結ばれていました。
ギュッと結ばれて花を咲かせていたのでした。

「疑うことはないさ、これが春だもの。」

レンゲ草はにっこりと笑い、「今が春なのね」と気づきました。

お互いどこにでもいるレンゲ草でした。でも、一緒に咲こうねと誓いあってい
たのでした。

春は今、どこまでも続く春。 二人のレンゲ草は仲良く春の風に揺れていた
のでした。

田んぼのすみっこの畦に咲いた二つで一つの春のことでした。


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