春のきざし

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春のきざし

一年で一番早く春が駆け上がってゆく東海地方は、恵まれすぎて春の訪れ
の速さを見逃してしまいがちになります。

菜の花が咲き、梅の枝から訪れる春は、すぐにレンゲの花を迎え、早咲きの
桜までを見せてしまうのです。

そこへいくと中仙道の春はゆっくりです。

とうに春が駆け抜けた東海の北にある宿場町は、昔と同じように歩く速度で
春を迎えます。

戻り雪も降る中に、少しづつ春を足してゆき、歩く人をもてなそうと、一枝づつ
花を咲かせてゆくのです。

春の木の下にはたくさんの人が集まります。

そこで出合った外人のカメラマンが、春を撮っておりました。

面白いことにデジタルカメラに長い三脚を一つにして、その脚を持ち、カメラ
を動画にして抱えています。

高いところから、歩くスピードで花への道をたどっているのです。

中仙道を旅する春は歩くスピードでやってくる。カメラマンはゆっくりゆっくり
と花の道をたどって歩くのでした。


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