イチロー的こころ（旧版）

二年くらい生やしていた顎ヒゲを剃った。
髪も相当白いものが混じるようになり、ヒゲなどもっと顕著で白山羊さんに
なっていた。
ゆえにツルリとした顎が欲しくなった。

男が身嗜みを気にし過ぎるのは格好が悪いなんて思う世代だから、ヒゲの生
え具合を鏡でチェックし、生え際を気にしているのが面倒になったのです。

人の顔は体以上に重力に負けてくる。そんなことを考えてもいなかったのに
頬が垂れてくると「お父さんに似てきたね」と元気だった頃の父を知る人が
言う。

女性のように顔をマッサージすれば筋肉が引き締まり頬が持ち上がるだろう
かなどと考え、タオルでゴシゴシと顔をマッサージしたつもりが次の朝、皮
が剥けていた。

鏡など見るのは男の沽券にかかわる。などと言ってはいられない。

おじさんの為のフェイスリフト講座などないものかと思いながら行って学ぶ
なんてことはないんだけどね。

母は早くにその母を亡くした。親戚から「さみしくなったら鏡を見なさい、
たかちゃんはお母さんに一番似ているからね」と言われたそうだ。

自分は父に似ているそうだ。父は断言して長生きしてもらうから、似ている
かなあと思いながら見ている。
耳が遠くなり黙ったままの父は「俺と同じで生きるのが下手だな」と見守って
いる。

頬をこすり顎に手が行きヒゲのないことを思い出す。
明日は何度も違和感のある顔を見る。それもまた楽しみでもある。ニッと笑
って父に挨拶してやろうと思っている。