森は生きている

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森は生きている

深い森の公園は暗く奥まった果樹園を持っています。

せせらぎの橋を渡り、芝の丘を越えて石段を登れば、少し怖いような静けさの
中に迷い込みむのです。

遠くなってしまった夏には低い緑の天蓋を作っていた枝たちは、もうすっかり今
年の葉を落としてしまいましたし、来年の芽をつけるには少し早すぎる。
10月だと言うのに、もう冬の眠りの中に入っているのです。

大きな実をつえた枝はその重さを支えて今年もたいそう疲れました。

その枝を支えていた幹も、たくさんの水を吸い上げましたから、少しお休みを
したいのです。
たくさんの葉っぱがないうちは、根っこも少しだけ水を汲めばいいのですから。

同じように枝を広げ、同じような裸になった果物の木は、迷路を作っています。
もしもっと深ければきっと迷ってしまうほどよく似ているのです。

そして、少し眠けを誘うのです。

「木の根元の暖かな葉っぱの上は気持ちいいよ」とささやきます。

果物がなくなって、少しさみしい木は、人も動物も懐かしくなって、一緒に眠ろ
うよと誘っているのです。

迷いそうになって、振り返ると、木々が「またおいで」と言いました。

カサコソと靴の下で舞う葉っぱたちは、今年の夏の大きな屋根ふき材だったの
でした。


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この記事へのコメント
コメントいたします。
しっかりと大地をとらえていますね。
今の季節、今の心の角度をとらえていないと撮れない写真ですね。
先の季節を見つけ表現してくれた、凄いですね。
    「心に届きました」

  これを生を残した枯れた写真と言うのでしょう。
  感動いたしました。
Posted by 大黒屋 at 2007年10月30日 12:00
大黒屋さん、コメントありがとうございます。
不思議な空間に迷い込みました。しっかり管理した公園
の果樹園は音がない世界でした。
Posted by イチローイチロー at 2007年10月31日 09:16
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    コメント(2)