秋のお口

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秋のお口

三方原の茶色の大地に、真っ黒のサヤが口をあけました。

秋の乾いた空気の中で、もう水をあげないことにきめた茎は毎朝、パリパリッと
口を開くサヤを支えているのです。

大切に育てた実が入ったサヤはパリパリと音をたてて乾いておりました。
もう少し割れたら、茎や葉が待ち望んでいるように実は赤い大地に落ちてゆく
のです。

もう少しの辛抱です。

長い葉は風を受けて穂を懸命に揺らしています。
フラリフラリと首をふるサヤはそのたびに、パリンパリンと割れがすすみ、黒い実
を落とそうとしているのです。

赤い大地に育った大根たちはまもなく全て抜かれて美味しい沢庵になっていき
ます。
黒いサヤだって、また来年ここにたくさんの仲間を育てようと実をどっさりとつけま
した。

あと少し、パリパリッツと音がすれば、パラパラッと実が落ちていきます。

「雨はいらない、大きな風よ吹け」、黒いサヤはどっさりの実をふりまこうと秋の風
を待っているのでした。


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この記事へのコメント
コメントいたします。
「和の色です」
今の季節の全ての色が調和していますね。

私の大好きな色合いです。
Posted by 大黒屋 at 2007年11月02日 19:10
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