チャンチキチャンチキトントントンデーン
(深々とお辞儀をし)「名人円楽です」
落語の噺にはめでたい噺も多くございますが、どちらかと申しますと「おめでたい」
噺が多くございまして、これは祝うおめでたさではありませんで、人がおめでたいと
言う。「お前ぇはおめでたいねぇ」なんて男が出てまいります。
逆におめでたくない方の噺、お弔いの噺が意外と多ございまして「らくだ」なんて噺
は人に嫌われておりました無法者の通称”らくだ”が死んだところに兄貴分がやって
きましてとむらいを出させようとする。
もとより金はありませんから大家に出させようと、死人のらくだに”かんかんのう”を
踊らせると脅しましてとむらいの料理から酒まで用意させるなんて、落語は死人ま
で笑いのネタにしております。
ええー私も今日あの世に参りましたことから、弟子の楽太郎が私の後を継ぐわけ
ですが、できれば”かんかんのう”でも踊って席に出たいものでございますね。
平成になりまして落語も”名人”なんて言われる者も少なくなりまして、先だっては
名人小三治さんが勲章を受けまして名人の裏打ちまでいただきました。
私は面倒をかけさせないよってわけで人に呼ばれる前に自ら言っておりましたから
話が早いわけでございます。
噺家で生涯を終えましたが、思い残すものと言えば歌丸さんに譲りました笑点で
ございますが、これも歌丸さんが復帰するという朗報を聞いております。
思えば死ぬっていうことも考えれば目出度いわけで、向こうに参りますと名人上手
がズラリとおりまして、みんな蓮の葉を座布団に噺をしております。
これもいいですな、もう一度私も師匠の噺を聞きまして、同じ席に出られるというも
のでございます。
さてお時間もよろしいようで
私の跡は楽太郎が円楽を襲名しまして継いでまいります。
来年の盆には帰ってまいりますが、早く帰ってこいなんてウマを作らずとも、ウマ面
でございまして自ら走って帰ってこようなんて思っております。
円楽を譲って次には何になる?、「はい、星の王子様」に戻ります。
それでは今日の昇天はこれまで、ご機嫌よう。
※円楽師匠のご冥福をお祈りいたします。