サンザシに出会って何年も経ち、いつ頃にどんな色になるのかを
知っている。
まだ小さい実が大きくなって色がつき色を深め、やがてチョコレ
ート色に極まり地に落ちる。
この変化を見ながら夏から冬まで過ごす日々の中で、それを話題
にした。
現在書いている「色辞典」の前にこの「花ばなしい」で四季の花
や植物を追っていた。
そのはじまりは一枚の飾り団扇から始まっている。
四季のうつろいを感ずることを教えていただいたのは「着物と帯
大黒屋」さんで我が師匠である。
ある夏の日訪問した帰りに京の飾り団扇をいただいた。
飾り団扇は扇ぐものではなく、その季節の色を楽しむものである。
話は田の稲の話をしていた、うつろう季節にかざしてごらんと
渡していただいた団扇を持って夏の勢いの田に出かけたことを覚
えている。
季節はうつり、花ばなしいを重ねてあの年のこの季節となった。
サンザシの話をすれば、大黒屋さんに教えていただいた。
夏過ぎれば光は下向きとなり、私たちの心は地を見ることになる。
これが秋のあり方で、地、つまり土の色に心は惹きつけられる。
全ての色は深まり、私たちはその色の心となる。
サンザシの実も深まり、やがて12月にその実を地に落とすのであ
る。
私たちは年末まで心を深めてゆく、極まりは大晦日である。
そして元旦とともに、その心をまた空に向ける。
今はその時のために地と地の色を見つめてゆくのである。
自然とは人の心もシンクロさせている。私たちの心深まる時にサ
ンザシは色を深めている。
やがて落ちる心は、空に目をあげる日を待っているのである。