大きくて丸い葉を全て落としてしまう冬に、枝だけが広がる
紫陽花はパチンパチンと切られてしまいます。
とても強い紫陽花はそれでも春に新芽を出してきます。
空に伸びた枝にふっくら緑の葉芽を出せばもう大丈夫、切ら
れることもなく育つことができるのです。
テレビを視ることもない紫陽花は今年も枝と葉を伸ばします。
できることをするだけさ、と教えるように太陽に向かいます。
そして気づけば葉を広げ繁り、それが紫陽花だったと気づか
せてくれるのです。
雨の季節に咲くなんて運が悪い植物でしょうか。
冬の間にパチンパチン切られてしまうなんてかわいそうな植
物でしょうか。
けれども一年にひと季節、雨がザァーと降る日に「おや綺麗
だね」と気づいてもらえればよいと思っているのでしょうか。
たくさんの雨が降る季節があります。季節は一日いちにちの
積み重なりです。
昨日の紫陽花と今日の紫陽花は違うのだけれど雨の中でニッ
コリと丸く咲き続けるのです。
テレビばかり視て悲しんでいると先のことを忘れちゃうぞ
と紫陽花に叱られるかもしれません。
でも何かしたいんだと言ったら、足を地につけていなければ
いけないよとも教えてくれるでしょうか。
雨の中でだって咲くことができるんだよ、紫陽花は教えてい
るのでしょう。小さい芽だってあの花のために育てているん
だよと知らせてくれるのでしょう。
上をむいて行くことが君ができることじゃないかとも教えて
くれています。誰も晴ればかりじゃないんだよとも教えてく
れます。
紫陽花は昨日より少しだけ太陽に近くなっています。
君ができることはまずは自分のことなのさと教えています。
私たちの花もきっと咲くさと教えています。