小さな水の緑たち

イチロー

2007年09月01日 08:03



畑の隅っこに大きな甕が埋けられておりました。

その中にわいた小さな緑は少しづつ仲間を増やして今では甕いっぱいに広がっ
ているのです。

これは水道がない畑の水甕でしたから、ときどきおばあさんがやってきて、柄杓
で水を汲み、パッパッと作物たちに水を撒いています。
そのたびに仲間たちは水と一緒に汲み上げられて撒かれてしまいます。

でも運のいい仲間は柄杓にはりついてまた戻ってきたりもするのです。



おばさんの畑の隣には大きな休耕田があるのです。
そこには壊れた水路からたくさんの水が流れこんでおりました。
そこにも、小さな緑の親戚たちがたくさんたくさん浮かんでいます。

畑一面に広がった緑は夏の間に水面いっぱいに広がって緑の屋根をつくって
います。その下にはたくさんの生き物が住んでいるのです。

秋になって白いサギがやってくるようになりました。
すばしっこく歩いて、足で泥をチョチョッと掻きあげて隠れている虫や小さな魚
が飛び出してくるのを狙っているのです。

小さな緑たちはサギの足のまわりにびっしりととりついて、生き物たちを守っ
ているのでした。

大きな田んぼも、小さな甕にも仲間がいます。
サギの足にくっついて、違う水たまりや田んぼに旅をする仲間もいるのです。

小さな緑は一つ一つでは何もできませんから、みんなで集まって暮らしてい
ます。

水のあるところは何でも覆い尽くしてしまいたくなる緑なのでした。

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