イチロー的こころ（旧版）

お宮の森の暗がりに小さい薄緑色の三角の羽をした蝶が住んでいました。

虫とりで森の藪に踏み込むと、暗がりの草から舞い上がり、すぐ近くに舞い落ちる
小さな蝶をハトと呼んでいました。

海にも小さな白いハトが群れて飛んでいます。

二人乗りのディンギーはスクールでもしているのでしょうか、一斉に進んではターン
する群れとなって飛んでいます。

遠い遠い昔のこと、奥浜名湖でライフジャケットを着てハトに乗っていました。
白い帆を見上げて風に舞っていると、帆を支えるブームに強烈に頭を叩かれた。

ディンギーは沈し、落ちた自分はライフジャケットで湖に浮かび、海を感じている自
分に満足していたのです。

白いハトが海にヒラヒラと飛んでいきます。

今は岸辺からその様子をながめ、子供の頃の夏と、青年時代のひと夏を思い出し
ているのです。