イチロー的こころ（旧版）

いつもの定食屋さんがお休みでありまして、隣り合いました店に入ります。

ロードサイドのＦＣ店でありまして、ひる時は混んでおります。
向かいの席には、カップル、夫婦というところでしょうか、若い二人が陣
どっております。

私たちが若い頃、もう３０年も前になりますが、女性をエスコートするなん
てぇことを思いつきますと、一週間も前から店を選びまして、服を用意し靴
まで磨きましてちょいと洒落た店に誘おうなんてことをたくらみましたな。

たくらんでおりますだけでもてやしませんから、実現しないというオチがつい
ております。

そんなことを言っておりますと、当時の兄貴分が言いますな。

「女とはラーメンに行くべし！」

当時、兄貴分は建築会社に勤めておりまして、大層男っぽい格好をしてお
ります。安全靴に作業ズボン、作業服にヘルメットといういでたちでありま
して、東京のことですから現場までその格好で通っております。

兄貴にはつきあっている彼女がおりまして、時々デートになりますが、わざ
とその格好でいっちまいます。

そこでラーメン！それも今で言う有名店などではありませんで、その変に
あります道産子ラーメンで、ラーメンと餃子を食べてデートにするんですな。

まじめな彼女さんは、きれいに着飾ってきていますが、兄貴は貯金ができ
たら結婚する相手なんだからと言う。

なかなかよいもんでありまして、気取ったところばかり見せては暮らして
いけないんだという教えなのでありました。

それでも兄貴、そんなことばかりしてますから、ネタバレしております。

すっかりラーメンモードになって駅に降り立ちますと、彼女のご家族がズ
ラリと待っていた。

そのまま家へ連れていかれまして食事になったそうでありました。

汚れ服でかしこまってしまった兄貴、飾らない性格をすっかり気に入られ
たというハッピーな幕が待っておりました。

ラーメンも今や、美食の種にもなる。
むしろ、ラーメンならば、その辺の店へ行くより喜ばれるのかもしれま
せんな。

二人で食べればなんでもご馳走であります。　そんなお話でありました。