開高兄のカニ

カテゴリー │デキゴト路地



いただいたアサリは殻も大きいが色気タップリの身が詰まり、酒蒸しでいく
らでもいける。

目を閉じれば海のジュースは潮そのものであり、こんな時期まで潮干狩りに
も会わずにまんまと太っていたアサリの年増である。
かつて開高兄がアラスカから南へ下りながら書いた「オーパ」に書いたよう
に、大きな貝にはひとつづつ太った蟹が入っている。
兄の本でうまいものと表現されたものは読者弟は鵜呑みにしてご馳走である。

貝をプルンと引き出して味わいながら、とっておいたご馳走蟹をチチッと
かじり、安物のウィスキーを口に含み転がしながら喉に注いでゆくのだ。
好きなものが思いのほか太っていた喜び、皿に盛りあげてあり、一人で食
らえと言う。

蟹を見つけてはフォークでせせり出して並べながら肴にし、オーパの旅を思
い出し、一人で爆発している。

男は海が好きで泡だの潮だのが好きで、小さい豆蟹をせせっては喜ぶような
動物である。

開高兄の言う通り「汝、偶然の子なり」と繰り返し言いながら飲んでいる。

血液は海の水でありその流れの中に蟹は遊ぶように思えるのである。

偶然の子は今宵、開高兄と同じ肴を食うのである。

貝をひっくりかえしては蟹と戯むるのである。


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