イチロー的こころ（旧版）

脂がのって美味い

魚をこう表現するのは雑誌やテレビであり、おいしさが伝わらないのだそうた。
サバは脂の強い大衆魚であり、足が早いからトレトレの堅さがゆるんだ頃にいただく。
以前捕れたばかりで下館港に入ったという鯖を無理して刺身に造ってもらったが、肉が固くて食べられない。
鯖は脂が命、少しゆるんで、あの鯖香がするくらいがいいのだろう。

時に、強い火力でバリッと焼いた鯖のウマさも脂にある。

肉厚で骨離れがよい身をザックリと持ち上げ、大根おろしと一緒に口にほおりこむ。
口内に鯖の脂がジュウッと染み渡る。
鯖はウマミ脂のかたまり のだ。
身をほぐすうち、皿にはとろりとした透明のウマミが溶け出す。

半身の肉を食べ尽くし、裏返せば骨に沿って最高にウマイ肉をせせることができる。
脂が火に落ちて見事に焦げた皮についた身を皮ごといただく。
鯖はわずかな骨以外に残すところがないのだ。

脂の魚とは鯖のこと、焼いてウマイのは鯖脂がウマイせいだ。
夢中で食べられるのは脂のせいなのだ。

いくら鯖が好きでも、携帯でこんなに長い鯖へのラブレターを書くのは鯖好きを越えているのだ。

サバサバ。