山下白雨

イチロー

2009年11月21日 09:10



葛飾北斎の富嶽三十六景をあらためて見てみたい、富士山好きはそう考えて
第一景から毎日楽しみに眺めてはブツラぶつらと何かを書いてきた。

今回で最後、第四十六景は山下白雨(さんかはくう)です。

頭を雲の上に出し、向こうの山を見下ろして、誰でも歌う富士山の歌どおりの
景色をたった「五合目」から見たことがあります。

山下白雨はそんな景色を表しています。雲の上は快晴の中の富士、すそ野
には雷鳴が響く雨、雨を降らせる雲などは富士は下に敷いているのです。

写真好きだからもし富士に近いところに住めばきっと富士を撮っていたでしょう。
誰も同じ写真が撮れない富士山は、その広いひろいすそ野に多くの信者を持
つ、拝むも撮るも一緒、富士に向かいて言うことがないから、ただ手を合わせ、
ファインダーを覗きつつ静かに御姿を自分の為に残すのです。

今ね、昭和天皇に使えた入江相政侍従長のまとめた侍従日記を読みかえし
ています。
富士は全く天皇に似ている、恐れ多けれども私たちが「御」と素直につけられ
る唯一の人は富士のお山と同じように私たちを見ていてくださる。
それがうれしくて私たちはひたすら尊敬し、お慕い申し上げるのです。

富嶽三十六景などと言いながら、四十六景もの絵があることを知らなかった男
は、富士を見て四十六日を過ごしました。
富士のお山が見えると聞けば遠く茨城まで出かけた北斎、名古屋までも出か
けた北斎を知って富士がいかに遠望され、尊ばれたかを知る。

たいしたことを書かずとも四十六日富士を眺めた旅の終わりに、もう一度言いま
しょう。
いつまでも私たちを見下ろしていてください。
私たちはあなたの姿を見ては神を見ています。私たちは遠望できるだけで幸せ
なのです。

またその日限りのあなたに会いにいきますね。それまで「ごきげんよう」

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