海の色はなに色、昨年の4月から海を見下ろす事務所に移って
から毎日違って見える海の色を見て過ごしているのです。
世界の伝統色のその色と名前を見て何が書けるかに挑戦して
います。
海の色を青というならば、蒼のほうが的を得ているようですし、
海軍の使う海の色ならば群青が、アメリカでしたらネイビーの青
にはネイビーブルーがあるのです。
海の町に来て一番気持ちがよいことは海の男たち、漁師さんの
気風に触れたことです。
どんな仕事でも左右を決め付けることができないものですが、漁
師さんは違います。
風波があるだろう日は、出漁か休漁を前日に決めてしまう。
たとえ朝になって少し納まってきていても、それを変えないのです。
決めてしまえばただの一艘も漁に出ることはないのです。
そんな気風を持つ漁師さんはまさに海の色を最も見る人たちです。
けれども一緒に船に乗せてもらえば、きっとこの海の色を見せた
かったという色を教えてくれるのです。
沖に行けば海の色はどんどん変っていきます。
その中に潮目をいう変わり目があり、そこから先がとてつもなく美
しい色をしていたりするのです。
「この海を見せたかったんだよ」、必ず見られるものではありませ
んが漁師さんでさえ感動する色を海は見せてくれるのです。
海と空は一対のものです。空美しければ海美しく、その光は海の色
を次々と変えていきます。
「この空を見せたかったんだよ」
漁師さんは暗いうちから沖へ出て、ただ一人美しい夜明けの空を
独占しているのです。
海は何色なんて私たち陸(おか)の人には言えないほどの色をプロ
たちは持っているのです。