オールドローズ old rose

イチロー

2012年04月20日 15:57



年齢を重ね髪に白いものが混じり始めてから人は美しさを増す。
年齢を重ねる美しさは何もかも新品のような者にはない経験の
魅力を持っているのです。

世界の伝統色のその色と名前を見て何が書けるかに挑戦して
います。

齢八十歳を迎えた母とのデートは父の病院へ向う道、帰り道と
なる。病院に通ってはや二ヶ月になろうというこの時期は、家族
にとって最もキツイ時期であると医者も言う。

それでも家族はそれを乗り越えて、父を回復の希望がもてるま
でにした。とたんに気を緩めて母が風邪をひき、体力を落として
しまった。

「はい、お母さんに」、妹が母にプレゼントをした。
もうあまり出かけない母は一生分の衣装があるのだと、服を買う
こともなくなっている。着慣れていてこれがいいのと、同じ冬の上
着を毎日着て見舞いに出かけている。

妹が選んだのは品のいい白系のスプリングコートで、母は喜んで
それに着替えた。
白いものが混じるどころか、まもなく銀髪になろうとする母は白い
コートを着ればまた輝いているように見えた。

老女はまた少女のように喜び、コートを着た姿を鏡に映している。

父は「すまいないなあ」と言いながらスプーンでお粥を口に入れて
もらいながら母を見る。
息子も娘も少しだけ気をきかせて部屋を出る。

美しいことは年齢を重ねた向こう側にあり、服とは年齢と経験を
経たものを美しくするものをいう。
オールドローズ、母を色で表すならまさにこの色なり。

帰りに久しぶりのマーケットデートをすると、風邪ひき中にみられ
なかったほど母の目は輝いていた。

娘に息子に、看護師さんにもほめられたコート
自慢のスプリングコートを着た母はことのほか輝いてみえた。

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