イチロー的こころ（旧版）

三連休に入ったのは電話がピタッと止まることでわかります。

パンッパンッと花火があがり、事務所から見下ろす町には子供たちが
歩いています。
その方向は決まっていますからきっとお祭りに向かうのです。

子供らは今でも手におこづかいを握っているでしょうか。それとももう
自分の小さな財布を持っていて、大切にポケットを手で押さえて
行くのでしょうか。

何を買おうか、それとも食べようか、明日までとっておこうかと
幼かった僕のように迷ったでしょうか。

大人と同じ法被を着せてもらい、頭に鉢巻きをして、急げ急げと
足を早めているでしょうか。

お宮には高い高い幟が立ち、白い特別な幕が張られ、特別な日の
ドキドキにみんなが忙しそうにしています。

お祭りの日、夜まつり、祭り、つるべ落としの秋の日がお宮に人を
集めます。

お祭りの日は子供も特別な格好で出会います。普段合わない夜に
出会います。

遅くならないで帰っておいでの声はいつの間にか遠くに消えて
お宮の灯りに吸い込まれていくのです。

お祭りの夜遅い夜、ご神燈に連れられて歩くのでした。

「かあちゃんただいま」

真っ暗な中にシルエットで待つ母ちゃんに飛び付いていったのでした。

お祭りの夜はいつまでも心がざわめいていたのでした。