愉しみを一杯

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愉しみを一杯

本来は酒党である。

もちろん日本酒、などと野暮なことは言わず、酒といえば酒である。
一升瓶があれば言うことなし、なければ旅先のワンカップ、深夜のコンビニで
買う小さな箱の酒でもかまわない。

うっ!と言い、喉を通し、鼻に抜いて楽しむ香りの酒である。 のだが・・・

最近は先達にならってウィスキーを始めている。
もう随分、角を空にしている。 それも一杯か二杯の寝酒であり、22時台から
はじまるNHKの番組を静かに一人で観る時に愉しむのである。

本来はロックアイスがよいのだが、そうは毎日コンビニに寄るのも面倒だから
冷蔵庫の製氷皿でつくる氷で充分なのだ、たかだか寝酒である。

氷をカラカランと入れて角を注ぎ、カラカラッツと手でゆすれば氷が厚いロックグ
ラスの中に沈む、そこに氷を足せばできあがりである。

白い布か白い皿の上に、肴を置き、ロックグラスを置くのが美しい。
琥珀色のウィスキーがコロロンとそこにある。

強いほどうまいのだが、角は適度かつ香りすぎず、残った漬物を肴にして充分
である。

時々、カラカランとグラスをゆさぶっては愉しみ、またゴクリと舐め、ぐっと喉を通
しては愉しむ。

NHKの夜は、茂木あり、太田あり、谷ありと楽しい、どれもが角の肴になり、お
脳をとけさせてくれ、ゆるりと眠気を誘ってくれる。

それでも、最後の一瞬に残りをゴクリと愉しむことだけは忘れない。

最近は眠りにつく前の本が進まない、1ページの数センテンスのみで、ハタリと
本を落とし、眠りに落ちる。

ウィスキーはお好きでしょ、なるほど、好き、なんて考える前に眠っている。
そして、また今日、ウィスキーはお好きかなと思うのである。

ウィスキーを溺愛すると、酒の嫉妬も怖いものである。 男はバランスなのだ。


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