イチロー的こころ（旧版）

小さくても、ありがたいものがあります。

ある悲しいことがありました。耐え切れない悲しみの中にいた母の手に、父が
そっと握らせた小さなほとけさまを母は大切にしています。

なにか心配事があると、握りしめては拝み、大丈夫ですようにと願い、何度も
母を助けてくれるものになりました。

それまで見たこともなかったのに、父はどこから出してきたのでしょう。
なんでも凝り性で、徹底的に趣味も遊びもしてきた父が、どこかで見つけて買
ってあったものを取り出してきたのでしょう。

「これを握るとね、ホッとする」、母はときどき何かを願って握っています。

小さくても大切なものがあります。

手の平にすっぽりと入ってしまうほど小さいのです。

それでも、母の小さな願いは叶い、心配事は大事にはいたらないようにして
くれるのです。

祈ることをしらない罰当たりな息子も、その小さな顔を見るとホッとするのです。