イチロー的こころ（旧版）

和菓子屋さんには、菓子皿が備えてあり、お借りすることがある。

数年前まで老舗の和菓子屋さんの写真を担当しており、生菓子が変わる度に呼んで
いただき、写真を撮った。

ベテランの店員さんがケースに咲いた季節の花のような生菓子を摘んで大皿に分け
ていただいたものを撮るのです。

「小皿を」とお願いすると何枚かを出してくれ、そこから菓子に合わせて選ぶのです。

和菓子の世界は季節の先取りが命です。特に生菓子は冬の最中にお茶と共に春を
楽しむ花であり香りです。
写真は、凛と咲く早咲きの花を一輪、大切に撮るのです。

皿は和菓子の花を置く空気や土の色を表します。

光をあて、影を生かし、ふっくらと春を告げる菓子を引き立てるように、そっとそっと置き
シャッターを息をとめて押すのです。

一枚の皿は季節をあらわします。

まるで華道の世界のように和菓子をそこに置き、心静かに”在る”ことを伝えるのです。

皿を見て、一輪の菓子の花を思う。　静かな世界を楽しむことができるのです。

※写真提供：「Ｒｏｕｎｄ　table」ギャラリー通信！どの