とくな徳利

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とくな徳利

「おまちどうさま」、徳利と猪口が出てまいりますと、酒呑みはまずは量り
ますな。

徳利の形、これは太っておりまして、上げ底がなく、持ち重りは酒の量
であろうと推察しまして、満足をいたします。

どうせ一本では済みませんが量が入っていればうれしい。
酒呑みの心でございまして、覚えておいていただくとよろしいようであり
ますな。

覗けば口元まで入っておりまして、猪口に注ごうにもこぼれそうなんて
ことになっていれば、呑む前から顔がほころんでしまいます。

徳利を満たす酒などたいした量ではありませんが、溢れるほどの好意
を感ずるというものが酒の客をもてなす極意であります。

「あそこの店はうれしいねえ」なんてのん兵衛は通ってしまいますな。

昔の商売の極意の話がありました。

油を商っている店に嫁が参りまして、店を繁盛させたいものだと考えた。
そこで枡をこしらえてこれで量り売りをいたします。

客が買ううちに、どうも買った油が多いような気がすると評判になります。
これは枡を少し太く(大きく)してあったのであります。

わずかな量ではありますが得をさせてくれるからまた買いに来てくれる
という商いの方法であります。

これを見ていた家人が損をするのではと思いまして、今度は枡をこすく
(小さく)した。

とたん、店に来る客が今度は損をしていると噂をいたします。

たちまち店はつぶれそうになったというお話しです。

酒呑みも同じでありまして、口元まで入り、ずっしりと重い徳利がでま
したら酒もうまく感じます。

そこでまたあの店に行こうじゃないかと、こういう繁盛もあるというお話
でありました。

酒は飲め飲め、ってね、まだ午前中でございました。

※写真提供:「Round table」ギャラリー通信!どの


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