ぶっかけメシ椀

カテゴリー │焼きモノ書き

ぶっかけメシ椀

まだ祖父も祖母も元気で、叔父も叔母も揃い、その子の僕たちがズラリと
集まる父の在所は賑やかで大勢が楽しく集まる家でありました。

店をしていた祖父は若い衆を母屋に隣接して建てた倉庫の二階に住まわ
せていて、長男の長男、祖父からは初孫の自分は賑やかな家で育ってお
りました。

記憶にのこる台所に、職人のお兄ちゃんらが並びます。
その端っこに座り、一緒にご飯をいただきます。

ご飯は丼のようなメシ椀に大盛り、それに味噌汁がついていただけでした
から記憶の台所はきっと朝ごはんの景色なのでしょう。

「早く食ってしまえ」、祖父が言えば皆が一斉に残りの飯をかきこむ。

皆は味噌汁をぶっかけてしまえば早いものをと上目遣いに祖父を見てい
ます。

やがて早飯食いの祖父が席を立てば、祖母がおもむろに飯をぶっかける。
それを合図に若い衆たちは皆、ならって飯に味噌汁をかけるのです。

「出世前の男はぶっかけ飯はいかん」、祖父はそれが口ぐせでした。
その理由は知りませんが、怖い親方であった祖父が言えば、そうなんだ
ろうと思っておりました。

父が祖父の家を出でしまうと家族だけの寂しいご飯になりました。

それでも朝ごはんにいきなり味噌汁をぶっかけて早飯食らいをしても叱る
人はいなくなりました。

父もじつは大好きだったのです。

今は、もう出世ということも考えない年となりました。
味噌汁の具をたいがいに食べてしまうと、ほどよく残した飯に汁をぶっか
けていただいてしまう。

カメラ目線で撮った祖父の遺影が鴨居の上から見下ろしています。

「ごちそうさま」、祖父のことをこんな話で思い出しました。

天国のおじいちゃん、今日もごちそうさまでした。

※写真提供:「Round table」ギャラリー通信!どの


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