イチロー的こころ（旧版）

「お酒はぬる目の燗がいい」

熱燗すぎない燗酒を用意する人がいます。

ぶん屋さんから借りた小説に出てくるひとこまでもてなしの心を読ま
せていただきました。

歩いてくる人の距離を考えて喉が渇いているだろうと、まず出す酒
の燗をぬるくする。
最初の一本で喉を潤していただき、次に熱い燗を出すのです。

招いた部屋で人肌燗をゆるりと飲むうちに、歩いてきた人の体の火
照りが鎮まり、会話も弾む、胃が起きてきて肴がうまくなる。
後は熱燗を交わして酔いを楽しむのです。

お酒を多量に召し上がる方がおりますが、一合の酒の燗を変えな
がら秋の夜長を楽しまれるのがよろしい。

酒は交わすもの、よき友を招き、招いた人の歩みまでを読むならば
酒はぬるめの燗がいい。

肴は炙ったイカでしょうか。

それはおまかせいたしますよ。

おやおや、いい香りでちょうどよい燗でございます。

ひとついただきまして、ご返杯、おおい、もっと大きなものを持っと
いで、こちらは大変いける口なんだから。

いいんだよう、一緒に飲もうと思ってとっておいた酒なんだ。

月でも見ながらゆるりと行こうぢゃないか

※写真提供：「Ｒｏｕｎｄ　table」ギャラリー通信！どの