小鉢と煮物

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小鉢と煮物

「最近舌がだめなのよ」と母が味噌汁の味を心配する。

「大丈夫、おいしいよ」と息子は言う。

何十年も家族の為に味噌汁をつくってきた母はお玉で味噌をすくうだけでピタリ
と同じ味にしているプロなのだ。

すっと飲む味噌汁は確かにいつもの朝の味で変わらず、母は安心して味噌汁を
すする。全ては自分の為にあらず、子の為、家族の為の味噌汁なのである。

イワシを煮ていたのは、子が魚好きだからである。ピカピカのイワシをみつけた
と台所で料理している母は魚は苦手としている。
醤油や酒やみりんで料理して、息子に味見をさせる。

「山椒はどうかな、母さん」と提案すると、さっそく振ってみて味見をさせる。

今晩は、味の染みたイワシが小鉢に盛られるはずだ。

自分が商売が下手なのは、母に似て自分のことは後回しだからだ。
喜んでいただくことがこの上ない喜びでがんばってしまう。

味見をしてもらい、好評ならそれを得意になるまでやり、継続してゆく。
魅力なりと言ってもらいたくてがんばるのだが、やがてそれにも終わりが来る。

得意料理は食べさせる飯であるのは、母に似ている。

子は母のイワシ料理を楽しみに、今日もWEB上でお手伝い仕事をする。
どんな味つけがいいかなと想像してはものを書き、形にし伝えようとしている。

ブログもそんなことの一つである。

長く書いているから、大勢の人に読んでいただけるようになった。
ならば、喜んでいただけるように書きたいとも思う。けれど自分以上のものも出
せないのは本音である。

イワシ一匹のように泳いでいる。

イワシのくせにちょっと臍まがりで群れからはずれる癖がある。

※写真はラウンドテーブルさんからお借りしています。


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