イチロー的こころ（旧版）

８月の田はもう実りをその葉の中に隠しきれなくなっている。
びっしりとした夏の盛りの葉は夏の向こう側の収穫を約束して茂り、
その空には花火が豊年を期待して炸裂している。

日本の伝統色のその色と名前を見て何が書けるかに挑戦しています。

子供時代を田んぼが続く地域で育ち、自然を観察しながら小中を育っ
ている。同級生には多く農家の子供たちがいた。

実りを期待する農家は子供にその願いを込めて名づけている。
一人の女の子は「早苗」と言い、その「さわやかな」名前が農家らし
い名前であることを親に教えられた。

耕作くんがいたり、みのりちゃんがいたりするのと同じである。

団地っ子に比べて農家は豊かである。広い屋敷があったり自分の家の
野菜であったり、米であったり、その手伝いだったりと農家の子は他
所から来た団地っ子とは違う。

ある日学級で「鍵っ子」を問えばそれは圧倒して団地っ子が多かった。
農家の子は核家族ではなく大家族であるからだ。

庭のない団地っ子は農家の子が恥ずかしげに持たされてくる家で咲い
た花の新聞包みをうらやましいと思った。
小中を通じて学級に飾られる花は農家の子の役割でもあった。

田に水が張られか細いながらも力を感ずる早苗は、クラスでも人気の
ある女子だった。さて彼女の家が農家であったのかは思い出せない。