イチロー的こころ（旧版）

染料の色ながら、今昔物語では凝固しかけた血液の色として呼ぶと知る。
怪我をした血の色はまた「生」をも表す色である。

日本の伝統色のその色と名前を見て何が書けるかに挑戦しています。

母の入院で病院に通う、早朝から採血などのカウンターが混んでいる。
健康に暮らしていると思いもつかないながら、病院の混みようを見れば
病気や怪我をする人が多いことに気づく。

母は外科に入院したからほとんどが血を見るような怪我の患者が多い、
こびりつく血は病棟では日常でもある。
いずれも入院患者なれど、大部屋にいればその怪我が大きいほどある
意味の尊敬を受ける。

母など怪我のうちではないと思えるほどのギブス、包帯、補助具をつけ
た人が向かいや隣のベッドで唸っている。

病院にいけばいやおうなく健康のありがたさを知ることになる。
そして誰もが優しくなる。

若い娘さんがおばあちゃんほどの人のわがまま放題に話を合わせている。
「そうね、痛いね、ごめんね」といいつつキツイ寝返りなどを行わせて
いる。

「看護師さんには気が練れていなければとてもなれないね」と母は言い。

退院に「おめでとう」と言われて頭を深くさげてお礼を言う。

蘇芳なる手は近代医療で一週間で見違えるほどに治していただいた。
母はいそいそと「避暑」から戻るのだと笑う。そして息子も笑う。