イチロー的こころ（旧版）

お山に夏がやってきます。

お山のてっぺんにあるシンフォニーよりも、もっともっと高い入道雲がむくむく
とわいてきて、熱いお日様が芝生を焦がします。

芝をきれいに生やしておこうと、おとうすけが朝から水を撒きますが、真っ黒な
土はみるみるうちに水を吸い込んでゆくのです。

いつもは、おかあすけの運転する車で山のふもとまで降りて学校に通うさんす
けたちも、夏休みは一日中遊ぶことができるのです。

シンフォニーには夏休みになると、たくさんの子供を連れたお客さんがやって
きます。

さんすけはその中に自分と同じくらいの子供がいると、ちょっと忙しくなるのです。
だってね、みんな山で虫をつかまえようと虫かごを持ってきているのです。

一番上のさんすけがリーダーとなって、お客さんの子供たちを連れ、おとうすけ
と見つけておいた虫の隠れ家に案内します。

シンフォニーの回りにはくぬぎなど、どんぐりの木がいっぱいあって、隠れ家も
たくさんあるのです。

一匹づつクワガタをつかまえて、かごに入れて帰ってくるのです。

そして、次の朝、まだ子供たちのお父さんやお母さんが眠っているような朝早く
に子供たちは部屋を抜け出してくるのです。

そうです。虫は朝早くつかまえにいくのですよ。

ゲスト棟の階段の下に立っていると、みんな早起きして出てくるのです。

シンフォニーの夏はクワガタの夏でもあったのです。

つづく

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おやまの五すけ