人魚姫とおじいさん

カテゴリー │おはなしの世界

人魚姫とおじいさん

あるところに、とても働き者の娘がおりました。

働いて、働いて、たくさん勉強もするだけでなく人の為に働いておりました。

でもそんな生活に娘はちょっと疲れてしまったのでした。

そうだ、私は人魚になりたかったんだわ、そう思うと娘は海辺の町に来て
魚のような尾を手にいれました。

でも、その代わりに働き者の足を引き換えにしたのです。

大きな海が大好きな娘は、人魚姫になって浅瀬で泳いでおりました。

そこに、暮らしていた村から働き者の娘に仕事を手伝っておくれと呼びに
来たものがありました。

娘はもう人魚姫になって暮らして、あの多くて深い綺麗な海を泳ぎたくて
仕方ありませんでしたから困ってしまって漁師のおじいさんに相談しました。

「ねえ、おじいさん、私困ってしまったの」

おじいさんは言いました「がんばり屋の娘さんとして歩いてきたことを捨て
てはいけないよ、今は素敵な尾を持っているけれど、今があるのは立派な
足で歩いてきたおかげなのだからね」

人魚姫になっって大きな海に行こうとしていた娘は考えました。

「私はいっぱいいろんな人の間を歩いてきたんだ、そして今があるのね」

そう、歩いてきた道を捨ててはならないのです。

娘は今は足の代りになった尾をみつめました。
すると、尾がするりとぬけて、働き者の娘の足が戻ってきたのです。

娘はおじいさんに、素敵な尾を預けて、迎えの人と町へ旅立つことにしました。

それまでおじいさんがキチンと預かってくれると言ったからでした。

「働いたら、また戻っておいで、もうじきもっと暖かい海になるからな」

そうです、海はまだちょっぴり冷たくて人魚も深いところに行きかねていたので
した。

おじいさんは見送りながら言いました。

「歩いてきた道を捨ててはいけないんだよ、海はいつでも待っていてくれるからな」

春の海がパシャンと波を打ち寄せました。

海の仲間たちが、そっと見送っていました。「早く帰っておいで」

働き者の娘は、人魚姫となっても人気者になりそうですよ。

「そうだそうだ」と海がゆっくりとうねっていきました。


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この記事へのコメント
イチローさま

娘は、きっとおじいさんに背中を押してもらいたかったのでしょうね。
そして自分に正直になった娘は、海とそこにいる人たちをいっそう愛おしく思ったことでしょう。

爽やかな萌える新緑の気持ちの朝です。
Posted by マーメイド at 2007年04月12日 06:49
マーメイドには足も尾もあります。
足の記憶の経験の力で強い尾にもなるはず。
かつての世界の方を深く愛してあげてください。それがまた力となります。
Posted by イチロー at 2007年04月12日 10:20
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