薮入り

カテゴリー │おはなしの世界

薮入り

落語の世界は面白い話ばかりかというと、さにあらず人情話では親子の情や
夫婦の情などを聴くことができます。

昨晩久しぶりに「薮入り」を聴くことができました。

薮入り(やぶいり)と言うのは奉公人が盆と正月に主人からいただくお休み
のことでありまして、現在と違い奉公人は主人を親とも思い、主人は子とも
思って育てます。 小さな頃から奉公に出されますが、厳しくしつけられてこ
そ商売を覚え、人としても一人前になるというものでありました。

夫婦二人が幼い息子を奉公に出し三年、その間は家には一度も帰りません。
盆と正月も店におりますのは、一年二年の間に家に帰れば「里ごころ」がつ
きましてせっかく奉公でしつけたものが台無しになりますから、初めて帰ること
ができますのが三年目となります。 

そんな息子が三年ぶりに薮入りで帰ってくるのを待つ親心を語るのが「薮入り
」であります。

親というものはたとえ一日だけでも帰ってくる息子にうまいものを食わせ、ああ
もしてやろう、こうもしてやろうと思うものであります。
子供は照れながらも「ありがたいな」と親の心に感謝します。
しかしそんなことがはっきりとわかるのも子が親の歳になってからであります。

昨日久々に聴きながら、そうだったそうだったと若き日のことを思い出しました。

ある夏、東京から戻った自分を見て母が悲鳴をあげた。

「サンダルで帰ってきた!」

当時はサーフィンファッション流行の頃、その夏は細かい花柄シャツにハーフ
パンツ、ビーチサンダルの”最新ファッション”で息子は帰ったのでありました。

母は靴も買えないのだと息子を気遣い、ご馳走の並んだ食卓で顔を曇らせた
のでした。

お盆となり、息子さん娘さんが帰ってこられたお宅も多いかと思います。
またお盆で帰省された方も多いことかと思います。

親ならば子を思わぬ時はなく、子はその時にはまだありがたさが分からない
ものであります。
その子もやがて親の歳となり「薮入り」を聴いて涙を流す。

親のありがたさを知るのに今しばらく時間がかかるようでございます。


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