イチロー的こころ（旧版）

中学の時に中村って奴がいてね、と話し出せば話すスピードが加速するほど
昔のことが蘇ってくる。

あの頃、ラジオからラジカセで録音することをエアチェックといってさ、そうそう
あの録音と再生のボタンを一緒に押す、あのやり方でね。

ＤＪが音楽にかぶせて曲紹介すれば失敗、なかなかフルコーラスを録音する
ことができなくてさ、それでも辛抱強く自慢のカセットを作ったんだ。

金持ちの子供はソニーで、僕は親父にねだりまくってもサンヨー製でさ、デン
スケなんてのがあったね、ソニーの高級機でさ、欲しくてカタログを眺めてた。

ベースの中は向かい合わせの席と、長いすのような椅子があり、両サイドは
寝室になっている。
向かい合わせのテーブルの間にルーフからマイクを下げれば狭くても大丈夫
だね。

僕らの世代はみなＤＪに憧れていたんだ。
自分の番組を持ってね、リクエストは受け付けるけれど自分の好きな曲には
プライドを持ってかけるんだ。

自分の番組だからね。　もちろん長くしゃべったりはしないよ。

ＦＭって音楽を聴かせるもんだろう、そうだったよね。

ベースの窓は小さくて、それがかえって密度をあげて話をすることができる。

男には、いや男の子には小さな隠れ家もお城も必要なのである。

「もちろん禁煙でね」

「外にウッドデッキがあれば最高だよね」

こんなところで今日のところは合意をえた。

中村がさ、イチオシの曲だったんだよ、僕の推したニール・セダカのスーパー
バードよりヒットしちゃってね。ちょっと悔しかったもんだよ。

今夜は、旧友中村のイチオシ、洋楽チャートで一番をとりました曲をおおくり
いたします。

そうそう、この曲は長い曲でね、一度もフルコーラスでガチャリと録音と再生
ボタンを押しても録音できなかったんですよ。

Don McLeanで「American pie」、お聴きください。

ベースからお送りいたします。