銀のオルゴール

カテゴリー │音楽夜話

銀のオルゴール

心象に響く歌とはあるもので、またふとその歌を聴くとその歌の心象に入り
こんでしまう歌というものもあるのです。

何十年も前に聴いた歌を思い出し、もうそんな心象を忘れていたはずなのに
聴き入ってしまう。そんなことがあります。

インターネットラジオから「銀のオルゴール」(太田裕美)という曲が流れてき
たのです。

「結婚を祝う言葉をあれこれと考えてきたのに、目を見たら何もいえない」

舞台は新婚旅行に向かう新郎新婦を見送る列車のホームです。
仲間たちがホームにあふれるこのシーンはありきたりな風景ですが、その
にぎやかなホームにポツンといる”私”を歌は教えてくれます。

何も言えない私は、動き出した窓から一つのオルゴールを渡します。

動き出した列車の窓のオルゴール、オルゴールは私の心の象徴です。
そのオルゴールはゼンマイが切れていると言うのです。

若き頃、この歌を聴きそんな時に渡すものではないなと思っていましたが、
作者は動き出す列車と弾む心が切れてしまった私を書いたのだと気づく。

「一度でもキスしていたら運命が変わったかしら」と独白する私に、人生
とはそういうものだねと頷いてあげることもできるのです。

歌はさらに言います。
「ガラス窓一枚へだで幸せと不幸せです」

私たちは誰かを愛するとき、まるでゼンマイのように弾けそうな力を得る
ことができます。
毎日うれしくてうれしくて、ゼンマイのネジを巻き続けて暮らすのです。
そのゼンマイは、美しい音色を立て、思い出すたびに心を美しく響くのです。

でもそのゼンマイは一人だけで巻いてはいけません。
弾けそうなゼンマイを巻くのは、二人の手でなくてはいけないのです。

松本隆さんの歌詞は昔読んだアンデルセンの童話にも似ています。
喜びだけではなく、悲しみまでを書く作者はその心をオルゴールとして
表しているのです。


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