千種色ちぐざいろ

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千種色ちぐざいろ

「まだかなあ、早く帰ってこないかなあ」、落語「薮入り」で
奉公に出した息子が薮入で帰ってくるのを両親がソワソワして
待っています。

日本の伝統色のその色と名前を見て何が書けるかに挑戦してい
ます。

千種色は「商家の使用人の仕着せに使われた色」、まさに奉公
した息子「亀」ちゃんが着ていた色なのでしょうか。

仕着せ(お仕着せ)とは店のユニフォームでもある。同じ色の
着物を着て前掛けをかけていれば、どの店の小僧かわかる。

おや、伊勢屋さんの小僧さんだね、と認識されるのです。

遠い修行時代、浅草の対岸である向島の小梅でも、「山崎さん
の若い衆のイチローちゃん」と呼ばれた頃、やはり同じように
町内で可愛がられながら仕事を覚えたものでした。

向島は花柳界の地、料亭が並ぶ道では朝から板前修業の若い衆
が外に座り、芋を剥いています。
寒い季節にも下駄をはいて買い物に歩きます。

芸者さんになる前の半玉さんが夕方を前に一番湯に向かいます。

中華料理屋の小僧さんは一日中おかもちを持って自転車を走ら
せています。

ある夜、浜松から出てきてキョロキョロしていた小僧は駅で
チンピラにからまれます。

それを見ていた寿司屋の小僧が注進して、すし屋が建具屋が
米屋のおじさんが飛び出してきて囲み、「おとといきやがれ」
と小僧を守ってくれたものでした。

小僧奉公はその店の「子」となることです。
お仕着せを脱ぎ、町風となった一張羅を着て国を目指す休み
は「薮入り」同様の気持ちがあったものでした。

「イチローちゃん、帰るのかい」、寿司屋の小僧は盆暮れが
忙しく帰ることができません。
そんなことを思い出したお仕着せの色でありました。


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