イチロー的こころ（旧版）

１０月の雨、外を走る車が雨をはじきとばして走っていきます。

雨音で気づく朝ならばしっとりと落ち着けるのに、夜の雨はやはり少し寂しい。
せわしなく走る車にはみな行き先があって、待っている人がいる。
私はひとり、誰かからの電話を待っている。

こんばんは、音楽夜話の時間です。

たとえ冷たい雨に打たれようと、暖かいふっくらと乾いた服のような笑顔で迎え
られるならば濡れても平気なのだけれど。

誰もいない部屋に帰るならばきっちりと傘の下、濡れないように歩くのです。
雨でプレスが消えたズボンに舗道の雨がはねて光っています。

靴の皮が水を吸って黒く色を変えている。
明日はこの靴で出かけられないな。

冷たい雨は心に降ってくる雨です。秋は誰もが少し寂しいと感ずるのです。

明日はきっと楽しいことが予定されていて、それを私が知らないだけなんだと
思い直します。

秋はあらゆるものを加速させてカレンダーの上を急いで滑っていきます。
雨音は置いてきぼりにされそうな心を加速させてせつなくさせている。

めがねをかけてこなかったから町の灯りはぼやけて光ります。
涙ではなくて、ぼやけているだけだからと歩きます。

明日はきっと晴れ、暖かい電話がかかり、また忙しい秋の日をおくるのです。

今晩は秋の雨、ハイ・ファイ・セットで「冷たい雨」をお聴きください。

彷徨わないで帰りましょう。きっと暖かい笑顔が待っていますよ。