黄色きいろ

カテゴリー │色字典



ある人との出会いが興味を広げ、広げた中に新たなる予感を感
じるようになり答えを導き、自らを深めてくれるのです。

日本の伝統色のその色と名前を見て何が書けるかに挑戦してい
ます。

昨年の12月に始めたこの色字典は「丁寧なること」への挑戦か
らはじめました。一色目から一年以上かけて最後の色まで旅を
しれば「丁寧」にならないかと思ったのです。

最初の教えは「光を感ずること」でした。
その挑戦は毎日の光の変化を植物を通して感ずることでした。
毎日野に出て花との出会いを楽しみました。

次の教えは「縦なる光、地に向かう光」でした。
写真を楽しむ中で当然としていた「横使い」のアングルから
「縦なる光」を教えられれば写真も「縦使い」となる。

元旦からはじまる縦の光を縦使いでとらえればその光を感ずる
ようになるのです。

そして今は「丁寧なること」を実践している。

大晦日は全ての光が大地に向かっています。深まりきった色は
チョコレート色ほどにもなって私たちは地面に視線を落とす。
その向こう側に明日の元旦があるのです。

明日の光はまた縦に射してくるのだと私たちは知っています。
深まりきった光は、元旦とともにまた私たちを天から照らして
くれる。
そして新しい年がはじまるのです。

偶然ながら順に書いてゆく色字典は大晦日に来年の色を預言す
ることができました。

まだまだ「丁寧なること」を極めることなどできませんが、毎
日その答えを実感する日まで過ごしてゆくのです。

「丁寧なること」を教えていただいた「着物と帯 大黒屋」さ
んに感謝いたします。
そしてその道が一年程度ではとても到達できないものであるか
ら来年への挑戦になるのだと信じています。


 

薄香うすこう

カテゴリー │色字典



薄香と書いて「うすこう」と読めば雅なる香りを思うのだが、
これを薄香(うすいかおり)と読んでもみたい。

日本の伝統色のその色と名前を見て何が書けるかに挑戦してい
ます。

梔子(くちなし)の花とはじつは香りを持ちませんが、その花
に薄い匂いを感じるのが作詞家の感性です。

「あなたから許された口紅の色」の匂いがその香りだと言うの
です。

かつて私たちの前にあらわれた「山口百恵」はさまざまな預言
を行いました。
実体である百恵さんのために作られた歌は彼女に歌われること
でその歌詞は預言となったのです。

百恵さんの眼は時代の人すべての人を見据えていました。
半眼となって預言するその歌はその「短い歌詞」から全てを
読み取りなさいと言っていたのです。

まだ年若い少女は時に巫女になって私たちとをつなぎます。

そしてやがては菩薩となって私たちのあの時代に存在した。
そしてその薄香は彼女とともに去っていったのです。

私たちはその口紅の香りを今も想像するだけなのです。


 

源氏鼠げんじねず

カテゴリー │色字典



源氏と鼠と聞けば古き時代から私たちの同居人である鼠がいた
のだと知ることができる。

日本の伝統色のその色と名前を見て何が書けるかに挑戦してい
ます。

古代ギリシアの哲学者アリステレスが農作物を荒らすネズミに
ついて書いたというから紀元前からヒトはネズミと暮らしてい
た。つまり共生関係はさらに古くからあったということになる。

「あの尻尾が嫌いなのよ」と長い尾を嫌う女性も多いながら、
尻尾を持たないマウスならば大好きとなる。

寒いこの季節、大きなネズミとされる「カピパラ」が温泉に
浸かっているのをみればカワイらしいとも思う。

ネズミの前歯は伸び続けるから何かを齧らなければ伸びすぎて
やがて口をふさぎ食べることができなくして死んでしまうと聞
けば、カリカリと何でも齧る性質を理解する。

それにしても「齧り食べ続けることを本能的に義務づけられて
いる」とは働き中毒たる私たちにも似た動物であると知る。

カリカリと仕事をし続け、新たな壁に挑戦して小さな穴をあけ
ることをにつとめ、やがてそれで食ってやろうと企み続ける。

ネズミをもって我を知るというところである。

小さなもの、つまらないものとさげすまれながら、アリストテ
レスにも無視されないものは今も私たちと共生している。
努力を忘れない小さなネズミは世界中に千種もの仲間をつくり
繁栄している。

私たちも世界中で繁栄し、努力をし続けている。


 

紫苑色しおんいろ

カテゴリー │色字典



色名は自然にあるものから多く名づけられる。紫色のその花を
人は「紫苑」と名づけ、その色を紫苑と呼ぶのである。

日本の伝統色のその色と名前を見て何が書けるかに挑戦してい
ます。

紫苑は花の名、別名を「十五夜草」とも言うと聞くがこの物語
の前に既に頭の中にピアノの音が聞こえている。

「シオン 僕が最初につけた シオン 可愛い君の名前」と歌い
はじめる沢田聖子さんの歌が流れてきます。

若き頃この歌を聴いても若いフォーク系の弾き語りシンガーな
のだと認識するのみ、その若き声は響くことがなかった。

それを今聴けばまた違う思いで聴くことができるのです。

歌手やシンガーの多くは若き才能を煌かせてデビューし、同じ
世代の応援を得て多くの歌をつくり歌ってゆく。
その時代を作った歌手たちはやがて記憶の隅となり、また新し
い歌に違う時代を私たちは過ごしてゆくのです。

そして久しぶりにあの歌を歌う歌手やシンガーが今も活躍して
いることを知る。
その歌と歌う声は過ぎてきた時代の分、育ち深められている。

煌く才能が若き日に作った歌は今こそが美しいとも思えるので
す。

シオンは少年が美しい少女につけた名前です。
その少年と少女は私たちと同じように大人になった。

歌手やシンガーやソングライターや作詞家など音楽家はその才
能を深めてゆく。
私たちも一緒に育ち経験を深めてゆく。

かつては今聴くものであったりもする。シオンを今聴けばさら
に心に響くのである。


 

錆青磁

カテゴリー │色字典



錆とは金属が酸化することである。こんなことを理科で教えてい
ただいたことを思い出しています。

日本の伝統色のその色とその名前を見て何が書けるかに挑戦して
います。

NHKの「美の壷」という番組が好きでほぼ欠かさず視ている。
そこでかつて看板建築という商店の建築手法の楽しさを放映して
いた。

その中に美しい緑青がふいた胴葺きの建物があった。
「あか」と呼ばれるあの胴板で葺く新築の家は美しいことをよく
知っているのは、かつて建築関連業にいたからだ。

和風の家の軒などに高級な胴葺きが使われることがあり板金屋の
職人さんが作業しているのをよく見ていたものでした。

あらかじめ作ってくるものに加え、現場合わせをする作業があり、
測っては切ったり折ったりして作り上げる美しい軒などを飽かず
に眺めていたものでした。

「あか(赤銅色)」の銅板をおごる新築住宅は贅沢な家とされま
した。それがやがて「酸化」して美しい緑青(りょくしょう)が
覆って寺院のそれのようになじんでくる。

錆とは美しいものなり、番組では鉄の錆はやがてその鉄板を破断
してしまうが、緑青は幕となって覆い長く痛むことがないと言う。

錆がくると人は言うが、緑青がくるといえば美しさを長く保つと
いうのだから、我々はそうありたいとも思う。

なにごとも若さばかりが美しいのではなく、覆って守る包容力を
持つのが大人の美しさなのでしょう。


 

蒲公英色たんぽぽいろ

カテゴリー │色字典



不思議な音の名を持つ花は「たんぽぽ」、どこでもみかけ子供
でも知っている花の名前です。

日本の伝統色のその色と名前を見て何が書けるかに挑戦してい
ます。

松任谷由美の歌にあるからたんぽぽは「ダンディライオン」と
呼ぶことを知る、フランス語でその葉のギザギザがライオンの
葉のようだから名づけられたと言う。

そこでこの面白い名の語源を調べてみる。

諸説ある中で、古くは子供たちがたんぽぽの茎をまるめて遊ぶ
ことから「ツヅミグザ」と呼ばれ、鼓を打つ音から「タン」
「ポポ」と呼ばれるようになったとある。

つまり古来から今もこの花は子供たちの親しく遊ぶ花であった
ことがわかるのです。

今も同じ、子供たちは新しい言葉を生み出すものです。
一時は流行でもそれが広がり、大人もその名を使い出す。
古くも今も同じことが起こることがわかります。

たんぽぽ、この弾むような鼓の音は春の野辺に遊ぶ子供らが
作り出した名前。

それだけでも色名の面白さを知ることができるのです。


 

第8回の来年へ

カテゴリー │浜名湖フォークジャンボリー



今年の第7回浜名湖フォークジャンボリーから実行委員となり、
得意分野でということでWEB広報を担当しています。

吉田事務局長と打ち合わせし、新たに新ドメインを持ちWEBを
リニューアルし、同時にブログを新設したのが5月、9月のジャ
ンボリーまで、終了後も両サイトの運営を担当しています。

浜名湖フォークジャンボリー:http://hamanako-fj.com/

公式ブログ:http://hfj2010.hamazo.tv/

本日来年の第8回に向かってタイトル部分のリニューアルを行
いました。

たった2日間のイベントですが、このイベントには1年の計画と
運営をする実行委員とさまざまなお手伝いをしていただける
みなさんがいます。

当日は「みんなでつくるすてきな一日」をテーマに出演者の
みなさんもスタッフとなり終日の運営をしています。

今年は史上最大の62組を迎えましたから出演スタッフの数も
相当な人数となりました。

ときどき「まだブログを更新しているんですね」と聞かれる
ことがあります。

それでも開催日で終了すれば、その思い出や感激を伝えるこ
とができません。
その思い出を62組分、スタッフの数の分だけ書いていけば
書き尽くすことはないのです。

今年は多くの出演仲間が寄稿してくれたり、ポスターを貼っ
た様子の写真や文を送っていただきました。
その記事も発表することができ、より「みんなでつくる」こ
とができました。

浜名湖フォークジャンボリーはたった2日のイベントですが、
そこに起きたことは参加した人数ほどもあるのです。

浜名湖は出演者やスタッフのイベントとしてより会場に集
まっていただいた手拍子と拍手の仲間たちに向けて行われて
います。

会場である浜名湖ガーデンパーク野外ステージの千席を終日
埋めていただいた仲間たちの心を集めることができたら、き
っと一年でも書き尽くすことはないのでしょう。

そしてもう始っている来年に向けて第8回浜名湖フォークジ
ャンボリーがはじまります。

「まだ書いているのから、また書き始める」ことができる
のです。

そしてその先に今年の出演者やスタッフに加えて来年の仲間
たちが集まっていただければと願っています。


 

香色こういろ

カテゴリー │色字典



香りには色名と同じく個性がある。その個性を自分の香りにし
ようと古き人はその帷子に香を焚き込めていた。

日本の伝統色のその色と名前を見て何が書けるかに挑戦してい
ます。

色名と同じく個性がある香りを語れば色字典の続きとしてさら
に広い世界に遊ぶことができそうに思えながら、香りを表す実
体色など存在はしない。

帷子に香を炊き込め、その香の香りで自らを表すという文化は
よほど洗練されている。

男でも香りには興味があり、時に男性用化粧品のコーナーに寄
りいくつかの香りを楽しむことがある。
かつて学生時代はそれでもお洒落のつもりでトニックであった
りコロンであったりを選んでいた。

その高校時代から通う連尺の長谷川理容に行き、今はバリカン
頭ながら鏡の横に揃えられた整髪料を懐かしく見ている。

今も当時と同じものが並びVO5だのを見つけることができる。

洒落者の高校生は普及品よりちょいと高いものを選びその香り
を自分の香りだと思い込んでいた。

それは「エロイカ」といい、ちょいと大人の香りがした。
だが最近それを見かけないのはきっとその名のせいだ。

「僕の香りどう、エロイカだよ」とは最近語ではちょっとお
かしい。

とはいえ、この香りははつらつとした高校時代の自分を思い
出す。今でも変わりはしないさと探している。


 

RPBクリスマスイブイブコンサート

カテゴリー │浜名湖フォークジャンボリー



今年は浜名湖フォークジャンボリーの実行委員となり5月から
今まで活動しています。

アマチュアフォークの大イベントとして1年に一度9月の2日間
開催するこのイベントは今年で第7回を終えました。

昨年まで4年間のオフィシャルカメラマンの活動で大ファンに
なったグループができました。

レッドポイントブラザース(RPB)は島田市の4人が17年もの
間クリスマスイブイブコンサートを開催しています。
それを知り、いつか行ってみたいという願いが昨日叶いました。

会場は600人もの客席を持つ島田市のプラザおおるり(おおるり
は島田市の鳥)です。そこに毎年このコンサートを楽しみにし
て集まるみなさんがやってきます。

駐車場にも手作りの看板がありますが、海上入口にも大きな案
内看板がありました。なにもかもが手作りでうれしいのです。



初年ながら浜名湖フォークジャンボリーの実行委員として活動
すればいかに集客が大変なことかはわかります。
開場前から次々と集まってくる人の会話がうれしいものばかり
なのは、地元に根ざしているRPBの活動がわかるようでした。

「仲間のために20枚前売りを買ってね、すぐにさばけちゃったよ」

「母さんが一緒にいきたいと言うからつれてきたよ」

そして600席は開演前にぎっしりと埋まる、それも同世代から
お母さん世代までの女性で埋まるのです。



RPBはフォークグループなのだろうか、と心地よいコーラスの歌
を聴いていました。
オリジナルしかりカバーしかり、どの歌も「RPB」の歌になって
います。会場を埋めた仲間たちはRPBを応援し、その歌を聴いて
楽しもうと集まってきたのです。

「四人ともいい声」、初めて来た人の声がします。

リーダーのよっちゃん(杉浦由明さん)はエレキの若大将にあこ
がれてギターを始めた。今もギター大好きで愛しげにギターを
弾き、弾き語り系の歌をリードします。

ガロやオフコースが好きなリードボーカルのソンバーちゃん(森
下修さん)の歌は男前な声でいて甘く響く、どの音域もカバーし
てPRBの歌の可能性を広めています。

紅ちゃん(鈴木紅介さん)は前向きな姿勢のRPBの歌を歌います。
ハモニカを弾いたりけん盤ハーモニカからベースまで弾きながら、
あがり症なのをかくさずに話し歌うのです。

ベースのきみさま(牧野侯夫さん)も照れ屋そのものですが楽器
どおりPRBの歌のコーラスをささえ、リズムを刻んでいるのです。

4人ともが歌え、それぞれがリードして歌うことができる。
一人が歌えばみなコーラスにまわりそのバランスはどの歌でも変
わらない。

RPBの歌はゆえにどの個性の声もコーラスが支えて深めているの
です。
そしてそれに4人の楽器が重なる。その楽器も誰の演奏も仲間を
支えている。4声4楽器のコーラスが絶妙のバランスを持つ。



アマチュアバンドが2時間半(休憩10分)のステージを17年間も
満席の仲間たちと共に楽しむのには初めて参加した者ではその
魅力を全て語ることはできません。

最後の歌を終えたステージに向かって当然のようにアンコール
の手拍子がシャンシャンと響いている。

そのアンコールに「みんな何を歌うのか知っているんですから」
とRPBは「満天の星」歌い出す。

「満天の星」は南こうせつさんの歌ですが、その歌は私たちに
とってはRPBの歌になっています。

昨年の第6回浜名湖フォークジャンボリー最終日のオオトリを
担当したRPBはこの歌を歌い出した。
千席を埋めていた手拍子と拍手の仲間たちが、立ち始め、全員
が手をふりあげその手がキラキラと星をつくっていた。

浜名湖の最終曲に起きた奇跡は17年間島田市で積み上げた応援
によって作り上げられていた。

一番前の席に陣取った男は立ち上がり、キラキラの中にいた。
それがうれしくて何度もキラキラしていた。

キラキラのまま終了後のホール入口に出れば4人が4人の仲間が
みな書いたアンケート用紙を「すごく楽しかったよ」と言いな
がら出していた。

そしてユニセフへの募金箱へ喜んで募金をしていた。
そして「また来ようね」と来年のコンサートでの再会を約束し
ていた。

RPBはフォークソンググループとしてだけでなく、地域に根ざ
した「RPB」という歌を聞かせてくれるグループです。
どんな歌も「RPB」が歌えばカバーやコピーではなくなってし
まう。

これが大人の楽しみ方の手本になる。そのステージを楽しめば
きっと来年も来ようと思うのがわかるのです。

最後に、浜名湖を通じてRPBと知り合った仲間たちとも開場で
出会いました。微力ながらそのお手伝いができているならば
うれしいと思うのです。

※RPB紅ちゃんのブログ:あかてん通信:http://youkiniiko.exblog.jp/


 

鼠色ねずみいろ

カテゴリー │色字典



メリークリスマス、一年前の12月から色字典をはじめてもまだ
この物語を続けている。
二度目のクリスマスを越えてこのお話は続きます。

日本の伝統色のその色と名前を見て何が書けるかに挑戦してい
ます。

鼠は洋の東西を問わず私たちの暮らしと共にいるもの、嫌われ
ているようで同居人といってもよいほど親しみがある動物です。

今日は洋ネズミのミッキーマウスが暮らす世界に遊びに行く人
も多いでしょう。
その特徴的な耳をつけてマウスの遊ぶ世界を歩く人も多いでし
ょう。

我が家にもネズミが住み、深夜台所をチョロチョロしている。
なんでもかじるから注意をしながら、それでもその姿みれば
好ましくも思う。

ときどきはビスケットやクッキーの端を深夜族仲間の通り道に
ほおってあげる。

家のネズミ住むうちは家は安泰なのだと思いたい。
そしてこの記憶は祖先たちに通じ、その時代の世界中の心と
同じであると思いたい。

ゆえに私たちは逆にマウスたちの家や世界に遊びに行く。
そこで私たちは同居人たちと一緒に遊んでいる。


 

紅掛藤色べにかけふじいろ

カテゴリー │色字典



色名の不思議はその名に何かのヒントが含まれていることです。

日本の伝統色のその色と名前から何が書けるかに挑戦してい
ます。

紅掛藤色、この表現に感じたのは女性です、そして検索してみ
れば果たしてその色は「若紫」とも呼ぶとわかる。
もう一つの色は源氏物語で読むあの少女の名前なのでした。

「北山を訪れた源氏は、通りかかった家で密かに恋焦がれる藤
壺の面影を持つ少女を見かける」

昔むかしの恋物語には今におきかえても「恋物語」として私た
ちに通ずる。その心は古代・中世においてもなにも違わないこ
とを知ることができるのです。

色名とはじつは人を表すのに適している。文化をふまえてその
名をつけ呼ぶことにまた意味を持たせることができるのです。

色名の文化は藤壺に似た少女の名ともなって継がれてゆく。

光源氏とは似てもつかずながらその少女の名に「紅掛藤色」を
想像する。

藤壺に似た幼き少女の紅なる唇。
この名をそう読み解くこともできるのです。



 

薄青うすあお

カテゴリー │色字典



薄青とは1 かすかに青みを帯びている色。 2 染め色の名。 淡い
青色。空色。古代・中世では淡い緑色をいった。

日本の伝統色のその色と名前を見て何を書けるかに挑戦してい
ます。

色名の不思議を検索すれば、ある程度の意味を見つけることが
できます。この色は淡い緑色を言ったに響きます。

あか、あお、きいろと言えば信号、それにも現れているように
あおとは緑色を指すのです。

それは古代・中世から続き、少なくとも信号が作られた現在ま
でその呼び方は続いていることがわかります。

今あたらしいモノがつくられたらもう緑色を「あお」とは呼び
ません、それが古代・中世から続く伝統であったとしても感覚
的な現代ではただしい色名とは言えないのです。

ある緑が「あお」であった時代がありました。
ならば現代でも「あお」なる緑が残っているはず、それを見つ
ければ私たちの文化の痕跡を知ることができるのです。

「あお」とつく言葉を思い出してみてまたそれを疑ってみて
知ることがあるだろうと思うのです。

色字典を通じてさまざまな色をめぐる旅は今につながる文化に
気づくこととなる。
言葉おもしろきこと、その色の実際よりさらに色名は面白きこ
とを知るのです。


 

黄櫨染こうろぜん

カテゴリー │色字典



色字典を書いていれば読めもしない色名にぶつかる。黄櫨に覚
えがなくともそれが「ハゼノキ」と知れば何かが書けるのです。

日本の伝統色のその色と名前を見て何が書けるかに挑戦してい
ます。

まだ秋も早い頃、山に行けば見事に色づく低木を見つけること
ができます。
「つかんじゃだめだよ」と注意されたことがあるウルシ類のあ
の真っ赤な葉を持つ類をハゼノキというそうです。

紅葉狩りに行く頃には紅葉の見事さに忘れてしまいますが、秋
のはじまりにその紅い色が秋の訪れを教えてくれるのです。

ウルシは椀や指物でつくられた箱や小さな調度に塗りこめられ
て美しいものを作り出します。
それを何度も塗ることであの美しい椀や文箱などができあがり
ます。

蒔絵師はうるし職人から受け取ったものに金を振りかけて文字
どおり漆黒の中に金色の絵を浮かび上がらせるのです。

今年は紅葉のライトアップを見ることができました。
まるで蒔絵のように闇に美しい金色を浮かびあがらせる紅葉を
見ることができたのです。

ハゼノキとはウルシ類のこと、ハゼで染めた色はこの色になる
ことをまた教えていただきました。


 

最後柿

カテゴリー │花ばなしい



「12月20頃までかな」

昨年から通う都田の柿農家の奥さんが言ったことを思い出し、
叔母の三回忌のあと母を誘って都田を目指した。

道路沿いに何軒かの柿農家が仮設の店を出すその道に目指す
柿農家があり、柿だらけだった店先にはみかんが積んである
のが目立つのです。

到着した店には先着のお客さんがみかんを選んでいる。
車から降りる前に柿農家の奥さんと目があうと、指を立てて
「シーッ」と内緒のサインをくれた。

「特別にとってあるのを分けてあげます」

先着のお客さんがいる間は母と一緒にみかんを選ぶふり、な
んとなくそのアイコンタクトがうれしくて待っている。

今年最後の柿は納屋の奥の籠の中、どうしてもと言うお客さ
んのために少量だけとってあるものを分けていただきました。

柿のなくなった食卓はさみしい。
あの晩秋だけの果物は食べてしまえばもう来年まで待つしか
ないのですから。

年季のはいった古テーブルに紅い柿、最近ではギザギザつき
のスプーンですくって食べるのがマイブームです。

「甘いね、甘いね」母と子は柿に思いがあるのです。

母の実家の柿もぎが子供の頃の年中行事だった頃、リュック
にいっぱいの柿を担いで帰ったものでした。

今年の柿も最後の何個になりました。

来年も母と一緒に都田へ行きましょう、親切にしてくれた柿
農家の奥さんに会いに行きましょう。

そして甘いね甘いねと一緒に食べましょう。


 

応援の力凌ぐ

カテゴリー │ヤマハラグビー部



※練習場での辻井厚之選手

残り6分、27-33。

豊田自動織機は常に先行して得点しヤマハが追いすがる展開に
バックスタンドのヤマハ応援団は「きっと」と勝利を諦めるこ
とはありませんでした。

ヤマハはジャパンラグビートップリーグの後半戦、精神力の
チームとして戦っている。
第8節サニックスに31-30で勝利、第9節クボタに22-20で勝利、
前節コカコーラに26-27と惜敗のヤマハラグビー部は僅差で敗
れた。

残り6分もまた前3節と同じ、残るは心で勝る方が勝つ、選手も
スタンドの応援団も気をゆるめることなく戦いました。

トップリーグにはロスタイムはなく、試合終了時間はホーンの
音で知らされます。
ホーンが鳴れば続いているプレイが切れたところで終了となる。

残り6分が過ぎヤマハスタジアムにもこのホーンが鳴り響いた。

ヤマハは最後の攻撃に敵陣に突進する。
その攻撃には23番目の選手たち、会場の応援団が「ヤマハッ、
ヤマハッ、ヤマハッ、ヤマハッ、ヤマハッ」と選手を押し続け
る。

冬の冷たい空気の中で大声を出し続ければ叫びは痛みに変わり
ます。体を張って選手が進むならばその「ヤマハッ!」叫びも
前へ前へと進む、喉の痛み以上の大きな声が選手を前へ前へと
進めるのです。

「ホーン以後は切れたら終了」

とめどない攻撃、前進、「ヤマハッ、ヤマハッ」

敵陣前まで進んだヤマハの列から「ヤマハッ」の声で押された
14番が飛び出します。そして「トライ」

声も枯れよと応援したスタンドは「ワーッ」と立ち上がります。
それは選手と応援が最後まで「止まらずに」進み続けたトライ
でした。

最後まで切れない心は会場を一つにして選手を押し続け、辻井
選手の背を最後にドスンと前に進めました。

そしてその心は静まり五郎丸選手のGKを見つめる。
静かに静かになったスタジアムのポールに楕円球が吸い込まれ
ていった。33-32

ヤマハは応援を力にして進む選手たちが戦います。
その心強ければ選手たちは確実に前へ進んでいきます。

切れなければ止めなければ「ヤマハッ」の声はゴールに向かっ
て進み続けるのです。


 

丁子色ちょうじいろ

カテゴリー │色字典



丁子などと見れば静岡県人は丸子(まりこ)の町を思い出す。
静岡市から安部川を越えてすぐ、梅園でも有名な丸子は静岡から
宇津野谷峠を超える手前にある宿場町である。

日本の伝統色のその色と名前を見て何が書けるかに挑戦してい
ます。

ご存知「丁子屋」は丸子に産する山の芋のとろろを食わせる店
であり、慶長元年(1596)創業と言う。

思い出して検索してみれば、丁子屋は動画でその歴史を紹介す
る。" target="_blank">http://www.chojiya.info/jp/#/history

とろろ好きは父譲りで大きなすり鉢いっぱいに「とんびとろろ」
と摺ればご飯が何杯も食べることができるのです。

先日お世話になっている(お世話にばかりなっている)天竜の
洋服屋さんから山のお芋をいただいた。
仕事で遅くなっているから待ちきれない父はそれを摺り、一本
分を母と分けて食べたという。

天竜の洋服屋さんのおかげでまた親孝行ができた。感謝してい
ます。

とろろはご飯にかけておいしくいただく他に、父はそれを残さ
ず飲めと教えてくれた。
それを飲めば必ず口のまわりにつけてしまい、かゆいかゆいと
口をかいていた。

ちなみに丁子とはその形が「丁」に似た香辛料のクローブのこ
とだという。匂い消しに口に含むという使い方もあったと知る。

丁子屋がなぜ「丁子」なのかは年が変わり丸子梅園の梅が咲く
頃までには調べてみましょう。


 

素鼠すねずみ

カテゴリー │色字典



寝床で昔語りとか昔話を読みながら眠りにつくのが好きで、何
度読み返しても面白く、また気づくことがある。

日本の伝統色のその色と名前を見て何が書けるかに挑戦してい
ます。

鼠は昔ばなしにもよく出てきます。外国でもミッキーマウスや
ジェリーたちが活躍するように私たちの暮らしが「ネズミ」と
一緒にあったことがよくわかるのです。

ネズミとネコ、トムとジェリーな関係はどの国でも同じ、日本
の干支のはじまりにもそんな話が出てまいります。

仲良しのネズミとネコ、神様が明日の朝、干支を決めるぞと動
物たちに言うと歩みが遅い牛などは朝までに着こうと夜から歩
き出します。

仲の良いネズミが迎えに来るというからネコは安心して家で待
っているとネズミは約束を忘れて牛の背に乗って行く。
そして翌朝一番で神様の前に着いた牛の背からチョロリと降り
たネズミは干支の一番になったというのです。

約束どおり待っていたネコは干支に入れず、今もネズミを恨ん
で追いかけまわしているということです。

ネズミは頭がよいのですが、約束を守れない。
そんなお話を眠りにつく前に読んでいるのです。


 

藤納戸ふじなんど

カテゴリー │色字典



寒い季節になればいつもの公園は冷たい風の中、ウォーキング
人の白い息があるばかりです。

日本の伝統色のその色と名前を見て何が書けるかに挑戦してい
ます。

公園の池は亀たちの池です。季節がよい頃には池から顔を出し
た岩によじのぼり、首を天に伸ばして日光浴をします。
近づけば、ポチャンと水に落ち睡蓮の葉の下に隠れるのです。

池の端には気持ちのよい藤棚があります。
そこにはいつも人がいてお弁当を食べたり、のんびりと話を
したりするところです。

藤の季節にはそこは満員となり長々と咲く房を見るのです。

そこから見下ろす池には川が流れ込んでいます。
公園を流れる小さなビオトーブの河口は広い広い海のような
池になっているのです。

藤の花咲く季節には座れない藤棚の休憩場所ですが、藤の豆
の季節には人がひいています。

緑から藤の豆がいくつも提がる様子は夏の楽しみのひとつで
す。

季節はすぎてもまた巡ってくる。
大きく気持ちのよい公園の藤棚にまた行くことができるで
しょう。

藤の花も私たちも今は冬の風の中にいます。そして巡る季節
を待っています。


 

青磁鼠せいじねず

カテゴリー │色字典



青磁と白磁、ツルツルとしたその色をみれば心は静かになる。

日本の伝統色のその色と名前を見て何が書けるかに挑戦して
います。

音の”セイジ”を知ったのは青磁ではなくセージとことでした。

スカボローフォアを聴いたことがあるでしょうか、あのサイモ
ンとガーファンクルの名曲のことです。

「スカボローフェアに行ったことがありますか」と問いかけか
らはじまる静かな歌声です。

スカボロー市場には私たちが当時知らないようなハーブが売ら
れていました。

「パセリ、セージ、ローズマリーとタイム」を歌われているか
ら知ったのです。

彼ら2日の歌は知らないうちに耳に入り、スタンダードとして
私たちの心に残っています。

作曲をしギターを弾き歌うポール・サイモンはよく知られ、ア
ート・ガーファンクルは「あの高音ののっぽの方」などと呼ば
れたこともあったそうです。

もしゃもしゃの伸びたアフロ頭とベスト、白いシャツののっぽ
の方の声が好きで彼の歌を選んで聴いたこともありました。

高音の透き通る風のような声のアートとセージはこうしてつな
がります。

「スカボローフェアに行ったことがあるかい」と問われれば、
パセリやセージ、ローズマリーやタイムを売ってるあの市場だ
ねとこたえることができるのです。


 

三椏はじまる

カテゴリー │花ばなしい



年末は今年生まれた全ての色が熟す時です。

地に向かった視線が見つけるものは深まるものばかり目に入り、
大晦日までそれは続く。
そして元旦とともに私たちは目をあげて真っ白な新しい光を
見つけるのです。

こう教えていただいたのは「着物と帯 大黒屋」さんでした。

年末に教えていただくと確かに元旦の寺の前に真っ白な幕を見
つけてその教えどおりだと知ったのです。

深まる色の向こうに全く新しい来年がある。
今年はうれしいことに、もう来年を見つけることができました。

寒さが本格的になる1月からその花をふくらめる花があります。
それは三椏(みつまた)という枝が三つに分かれる黄色い花で
なのです。

まだ小さな花房がついているのを見つけました。
この房が大きくなれば、その一つひとつの小さな黄色が新しい
年とともに咲くのです。

昔むかしの社会科の授業、各地各県の産物を学ぶ中に「こうぞ、
みつまた」という産物がありました。

和紙の原料となるこれらの植物から紙幣を作るのだと教えられ
ました。

あれから何十年、出会ったことのない三椏を知り、その花房が
ふくらむのを待つのがこの季節だと知りました。

花も美しいものですが、その名のいわれであるようにいつも
枝が確かに三つに分かれているか確認してしまうのです。