海賊船に鬼娘

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海賊船に鬼娘


え〜毎度おなじみ三題噺でありまして、寄席の高座芸のひとつで
あります。

高座からお客さんに三つの題をいただきまして即席のお噺をつくる
という遊びでございまして、私どもの一門「SEAESな二人」でお題
をいただきまして、遊ぼうという。

今回は浜松市のつちや餅店さんからのお題であります。

「ラム酒」、「スニーカー」、「宝くじ」ということにあいなりました。

果たしてうまく噺ができますかどうかはじめてみますよ。

「酒!」なんて言いますとサッとお銚子とぐい呑みが出てくる。

「ありがてぇ」とキュッと一杯いただきましてひとここちつく。

夫婦とは阿吽の呼吸でございまして好きなものを知っていてくれる。
好みの肴がサッと出てきたりいたしますと、うちのカカアは日本一
だな、世界一だななんて思いまして、男なんてぇのは明日も一所懸
命働こうなんて思います。

肴なんて言いますが、関東では肴、関西ではアテなんて申しまして
違いがあるものでございます。

酒なんていいましても所変われば品変わりまして九州へ参りますと
これが焼酎になります。

今日はこれが海外に行きますとまた違った酒になりますというお噺
であります。

「船長、船長!」

「なんだい、船長!って一回言えばわかるよ」 マストの上の見張り
が船長を呼んでは叱られております。

なんたってこれは英語かなんかあっちの言葉でしゃべっているんで
すが、そのままやってもお聞きの皆さんにわからない。
海外の噺でも江戸っ子みたいにしゃべっちまいますからご勘弁を。

「向こうに陸地がみえまーーーーす」

「なんだか間延びしてるね、こっちは漂流してるんだから早くいいな
さいよっ」なんて、船長が下町の女将さんみたいにしゃべります。

七つの海を渡るなんて言いますが、その頃の世界なんてのはまだ
開けておりませんで、オリンピックで204ヶ国が集まっているなんて
話は知りません。

ドクロマークをつけた船がお江戸に近づいてまいります。

「おーい てえへんだぁー」、こっちはお江戸側でございますよなんて
落語をしゃべりながら通訳もする、オリンピックでやれば美女軍団と
一緒に仕事ができますが、こっちは講座でじじいやばばあ。。。。。
なんてことを言ってはいけませんが・・・

お江戸の人がしゃれこうべ印の船に驚いているうちに、あれよあれ
よと言う間に船から小船が出まして人が降りてまいります。
※前の話もそんな噺だったような

お江戸側も奉行所から人があわてて駆けつけまして対応をいたし
ます。

「いらっしゃい、どこから来たの?」なんて訳にはいきませんで、役
人が進み出まして話をする。

「タカラヲサガシテ、ヒョウリュウシテキマシタ」

「お江戸へようこそ」、役人はゆったりとかまえております。

「して、何処から」

「カリブカラデース、カイゾクヲシテイマース」船長が答えましても
果たして海賊という意味がわからない。

なにはともあれ、もてなそうということになりまして浜に急こしらえ
の幕を張りまして料理を出すことになりました。

「ウマイウマイ」海賊の船長以下海賊たちは海の幸としまして江戸
前でとれましたイカを、山の幸として餅を食いまくります。

「コレハナンデースカ」船長が丸めた白いものが気に入って聞きます。

「これはつちや餅と申すうまい餅でござる」

「デハコチラハナンデースカ」

「これは酢につけたイカ、酢にイカでござる」

酒は灘の下り酒でございましてこれがウマイ、旨い酒は洋の東西
を問いませんで旨いものは旨い、海賊も大満足をしています。

「コンドハワタシタチノサケデース」

船長が船員に申し付けますと壜に入ったとうもろこし酒が出てまい
りますがその酌をする娘がまた美しい。

じつに海賊船でありまして、金や酒の他に美しい姫までも強奪して
きておりまして酌をさせる。

これには役人もポッと顔を赤らめましたのには理由がございます。

紅毛碧眼なんて外国人のことを聞いておりましたが、この娘、
青毛碧眼でありまして、虎柄の服を着ております。

それが胸と腰を覆うのみでありまして、役人も見たことがない洋
の風情であります。

「時に何をしにこられた」、役人は顔を赤らめてばかりでは仕事に
なりませんから船長に問いますと、船長はいいます。

「カイゾクハタカラヲサガシテマース」

宝をよこせと言われても困ってしまいますが、奉行所にもくれて
あげられるほどの金もなし、役人ぐっと腕を組み考えてしまいます。

ここからは公事方に相談をしてということで奉行所に帰ります。

「公事方に申し上げます、カリブの海賊の求めるものは宝なり」

ううむ、公事方もこんな相談をされたことがない、初めての宝公事
となりまして奉行所は大騒ぎとなりました。

「旨いですね」 役人は責任を公事方にまかせてしまいましたから
もう安心、幕に戻りまして酒を大いに飲ませてもらいます。

「ワタシノナハカリブノパーレーツトイイマース」、酒が入りますと
意気投合しまして自己紹介がはじまります。

「拙者は諸星でござる」

そのうち、公事方が幕にかけつけまして、富くじで当たれば宝を
持ち帰らせようなんて答えにもらないことを耳打ちします。

「富くじにて当たればお主に宝を進ぜよう」

虫のよい話ではありますが、パイレーツも七つの海を航海してきた
ばくち打ちでもあります。いいだろうと言う事で話がまとまりました。

さて、その夜更け、星を見ながら宵をさましておりました役人の諸
星のもとに、一人の女が忍んでまいります。

さきほどの酌女であります。

「スキヨスキヨスキヨ」などと申しまして諸星を押し倒したという。

その後、カリブの海賊は宝を満載して無事港を離れまして、めでた
しめでたしのお噺でありました。

・・・なんですか、合点がいかないって、言うんですかい?うる☆なあ

富くじが当たりまして海賊は帰ったってとこですかい

青髪碧眼の娘、これはラムと言いまして、諸星に恋をした。

諸星だけに、富くじは「あたる」わけでございます。

海賊との酒宴で出されたのが急場ですから急いでこしらえた酢にイ
カでありましたが、後日譚がございます。

さてあたるに教えてもらった酢にイカは新鮮なものをつかわないと当た
りますから、酢にイカは足が早い、早い足となりまして後に靴の名前に
なったわけでございます。

お江戸に現れましたパイレーツの飲んだ酒も連れてきた姫もラム、
酢にイカを教えたのがあたるでありまして富くじにもあたったというお噺
でございました。

しかし、酒もほどほどにしませんと、カカアに叱られる。
外で飲むときはもちろんですな。

「好きよ好きよ」なんて酒のことを言っておりますと「角」がでます。


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