怪獣ザリガニ

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怪獣ザリガニ

小学校は輝く田んぼの向こうにある。

この季節の通学路はまるで湖に浮かぶ橋のように田んぼの水に照らされ
ている。
もう40年も前、小学校へ通う通学路はそんな様子でした。

田に水を引く小さな水路を覗き込みながら歩くのは、ところどころにいる
小さな生き物を見つけて歩く楽しみです。

少し太い水路の棒杭には必ずアメリカザリガニがいて、ドキドキしてしまう。
学校へ向かう道でなければすぐにでもつかまえたいのです。

「ザンキーいたぞ」、きっと帰りには大いに道草をしてザリガニ釣りをするの
です。

田にはヒラヒラと泳ぐ気持ちが悪いヒルがいたり、スイスイと泳ぐゲンゴロウ
がいます。
図鑑でしか見たことがないタイコウチやタガメが見つかればバンザイしたい
ほどの喜びです。

もういなくなってしまったと思っていたアメリカザリガニを見つけました。
公園の浅い水はビオトーブ、水草の根元から這い出してきたのです。

太陽に照らされて大きな影をつくるのは、小さな小さなピッツピッツメダカです。

浅い水底のザリガニはまるで怪獣のようなカッコよさをしています。

「アメリカザンキーだ!」、少年の心が叫びました。

子供を連れたお母さんが歩いてきても、少年は黙っています。
僕だけが見つけたザンキーなのですから。

今は獲られることもないだろう彼は、ゆっくりと水底の怪獣の姿を見せてくれて
いたのでした。


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