イチロー的こころ（旧版）

「ゴロリゴロリと寝ていないで夏を楽しみましょ」

畑の隅に咲いた小さな花が大きな実を誘っています。

大きな実はもう夏をいっぱいにしてゴロリゴロリとしています。

小さな花はまだ咲き始めたばかり、楽しい夏の日差しがうれしくて
仕方ないのです。

モクモクと育ってゆく入道雲もサッと降って去ってゆく雨も、畑を渡る
風も小さな花にはうれしいことばかりが続くのです。

おじさんはゴロリゴロリしていて楽しいの？

小さな花が聞くと大きな実はもっと楽しみなことがあるんだよと言う
ばかりでした。

大きな実はよく熟れていて、お百姓さんに運ばれていきました。

小さな花も小さな実をつけました。

大きな実はお百姓さんの家族みんなに「おいしいねおいしいね」と
食べられました。

そして来年もたくさん育てようと思ってもらえたのです。

小さい花の実は土の上に落ちました、そしていくつかは幸運なこと
に土の中にもぐりました。

きっと来年も先に植えられた苗が育ち、大きな実がなるでしょう。
そして、少しのんびりした小さな花が咲くでしょう。

そうしてまた「ゴロリゴロリと寝ていないで夏を楽しみましょ」と話す
のかもしれません。

大きな実もとても幸せです。小さな花も幸せです。

大きな実も小さな花も夏の畑で精一杯生きているのでした。