湯のみの空気

カテゴリー │焼きモノ書き

湯のみの空気

昨日は昭和初期の旅館の次の間でいつの間にか眠ってしまった。

開け放った窓、忘れた頃にコーンと鳴る鹿威し(ししおどし)、畳の匂い
に寝転がると、木の天井の模様を見ているうちにウトウトとし、聞けば
30分ほど寝入ってしまったらしい。

古い旅館には新鮮な空気が通う。全てが乾き、空気となった空間に
秋は静かにそこにいて、光の中に自分がいる。
渾然一体となり、眠りが訪れる。

湯のみに入れたお茶の湯気を寝転びながら見ていた。
どこにいっても二膳飯を遠慮なくいただき、味噌汁の味に感嘆し、湯
のみのお茶をすすっている。

湯気がゆらりと見えて空気を一時あたためた後、口を洗い、次に体を
暖めてくれるのです。

熱い茶やコーヒーを淹れる湯のみやカップは適度に厚いものがよい。
口が焼けず、それでいて暖かさを伝え、少しの覚悟で熱いものをすす
る。

手に熱くなく、包めば手を温め、ふうっふうっと冷ましていただく。

自分の手にあったものを選び、自分のリラックスタイムのお供とする
のです。

昭和の建物の中でゆらりゆらりと湯気のように座り、眠気を覚ます。
仲間はもうとうに酒を終わり、お茶を呑みながら訪れた夕暮れの庭を
見ていた。

いつまでも一緒に話していたいような昭和の中でお茶を飲んでいたか
ったのです。
心かよわせた空間は、人であたたまっていたのです。

※写真提供:「Round table」ギャラリー通信!どの


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