イチロー的こころ（旧版）

とても車など買える時期じゃないときに、魅力的な娘が登場する。

人生とはそんなものである、新しい娘との恋などはタイミングを失えば
成るものではない。

そう言えるほどの歳であるかどうか、これも怪しい。

１９７４年、先代のフォルクスワーゲン・シロッコは誕生した。
ちなみに筆者御歳１６歳、そろそろ欲しい車ぐらいは言える頃である。

現代では１８歳を待ちきれずに免許を取る若者が減ったと言う。
嘆かわしいこと、今や若者は車なしで自分ノアイデンティティを表現で
きるのだと言う。

話を戻しフォルクスワーゲンからゴルフⅠが発売されると、そのスタイ
ルとベンチに座った如くの運転スタイルに驚いた。
現代ならば、ワゴンＲしかりのスタイルとシートと極めて似ていると申し
あげればいかに先進性があったか・・驚くのだ。

羨ましいことに、その赤い新車の一台を友人が手にいれた。
友が手にいれた娘を羨ましいと思えば、なにか他に手はないかと考え
る。若さは無限の高望みを可能とさせる。
望む前にあきらめたり、自らの腹をながめたりはしないのである。

さて、シロッコ、これにお目にかかったのはお江戸東京となる。
ゴルフから派生した２ドアスポーツはゴルフが高く広くという”ワゴンＲ”
的な先進性を持つのに比べ、ワンダーシビック（三代目）的である。

低く、足を前に突き出して乗るという従来の運転姿勢に”退化”させた
ゴルフがそこにあった。
この”娘”も専門学校の同期がものにして走り回らせた。

ゴルフもいいけれど、やはり僕はトラディショナルなんでねとスポーティ
なシロッコを乗り回した。　羨望羨望、男はゴルフよりもトラディショナル
な陸上競技をを好むのである。

さてデータがあっていれば初登場からは３４年ぶりというシロッコが再
登場した。

いただいた写真は３４年前の少年に戻してくれるに充分にシロッコを思
わせてくれるのは”失われた２ドア”のクーペであるからである。

２ドアで満たされる層は誰かを想像するまでもなく、シロッコの”再”登
場は”スポーツゴルフ好き”な層だけでなく、そろそろ五十を越えた二人
乗り世代である。

車の名称はセールス対象をターゲットしてもよい、ならば３４年も使われ
なかった名称はある特定の層にアピールする。

テレビのＣＭのＢＧＭにしばらく前まで振り向かされていたあの手法で
ある。
時は少し流れ、ＣＭは新たに力を持った４０代向けに変わる。
５０代は少し行き先を失いがちになり、指を折って○金を考えようかとい
う時に、もう一度メーカーからノスタルジックな青春の音を聞かされるの
である。

友人は企業の跡取りであり、専門学校には経営者としての素養として
通っていた。
恵まれたる彼に誘われて外堀通りを走り、彼の素敵な彼女の待つ町ま
でその助手席に足を投げ出して座った。

頃は初夏である。窓をあけて風をはらんんだシロッコは走る。

今再び、白いシロッコが登場してウインクして見せた。

「久しぶりね、その後どう？」

「あ・・うん、いろいろあったけどね、君はきれいなままだね」

流行の服をさりげなくまとい、さらに若くなった娘が目の前に現れた。

さて、諸兄の腹はいかがだろうか、低いシートに腰を下ろしてストレート
アームで運転できる体力があるだろうか？

立候補は早いものがちである。